勇者達が魔王バラモスを倒して数日が経った。
世界各地を回り、魔王討伐の報告を済ませた勇者達は再びアリアハンに戻ってきたのだった。
自らが作った町《ホープバーク》を離れ、故郷に帰って父親の店を手伝っていた商人の耳にも勇者達帰還の知らせが入った。
アリアハン 商人の家
父親「さぁてと~そろそろ昼飯にするかな。」
商人「はーい!じゃあお父さん、手洗ってきて。私が昼ごはんの準備するからー」
父親「おう!じゃあお前らも休憩してきていいぞ。」
従業員「はーい、お昼いただいてきます!」
従業員「お疲れさまでした~!」
商人「ええと、ご飯は炊けてるかなぁ?」セカセカ
アリアハン 商人の家 キッチン
商人「はい、ごちそうさまでした。美味しかったです、と。」
父親「同じく、美味しかったです、と。しばらくいないうちにまだ腕を上げたか?商人どの。」
商人「どういたしまして。あっちじゃすべて自炊だったし、お世話になった人にも振る舞ったりしてたからねー、えへへ。」
父親「ま、お前も短い間でずいぶんなんていうかな~、その~、大人っぽくなったってのかね。」チラッ
商人「なにそれ?そうかなぁ。たしかにいろいろ大変で何年もいたみたいな感じだけどさ。勉強もいろいろできたし、よかったのよ、今思えば。」
父親「苦労したんだな。いい経験したと思うぜ、俺は。またいつかその経験が役に立つことがあろうさ。」
商人「そうだね。あ、勇者達は今、城内で宴に参加してる頃だよね、きっと。」
父親「そうだったな。どんちゃん騒ぎになってんじゃねえか?まさかあの嬢ちゃん達が魔王を倒してくるなんてな、あの時は冗談半分かと思ったがなぁ。」
商人「あの4人も本当に頑張ったんだろうな。私も少しだけだったけどパーティーに入れてもらって嬉しかったなー。」
父親「お!そういやお前も勇者ご一行の一員だったんだな~!それを利用して利益をあげられ....」
商人「ません!」ビシッ
父親「は、はは。すまんすまん、冗談だって。な?はっはっはっ!」
商人「………(目は本気だったわね...)」ジー
商人「お父さん、そろそろ午後の準備しましょう。」カタッ
父親「もうこんな時間か。よし、午後もがっつり働きますかー。」
バタンッ
従業員「だっ、旦那さん!お嬢さん!大変ですっ!!」ハアハア
父親「あん?」
商人「どうしたの?血相変えて?」
従業員「お、お城で....」ゼイゼイ
商人「落ち着いて!」
従業員「兵士たちがいきなり雷に撃たれて死んだって!それに大魔王ってのが現れたって!」
父親「なんだってー!?」
それより30分ほど前
アリアハン 城内 王の間
アリアハン王「ゴホン!よくぞ帰ってきた勇者とその仲間たちよ!魔王バラモスを倒した汝らの働き見事であった。」
勇者「ありがとうございます!世界の皆も大変喜んでくれて、私と仲間達も嬉しく思います。」ベコリ
王「そうかそうか。世界に平和が戻り、世界中の人々が安心して暮らすことができる世の中になったのだな。」
大臣「この後は、盛大に宴を開く予定なのだが、ぜひ勇者殿とお仲間にも出ていただきたい!」
武闘家「うたげ?やったね!美味しいものがたっくさん出るよね、賢者?」
賢者「シーッ。武闘家さん、静かに。」ヒソヒソ
武闘家「あ、ごめん。でも出るよね?」ヒソヒソ
賢者「おそらくは。(相変わらず食いしん坊なんだから武闘家さんたら)」ヒソヒソ
勇者「ありがとうございます。ただ私達も旅の疲れがありますゆえ、今からではなく夜にでも時間を改め、開いていただけるようにお願いできませんか?」
王「ふむ、そうであったな。では夜までゆっくり休んでもらい、その後宴を開こう。では大臣そのようにな。」
大臣「ははっ。」
武闘家「えー?夜になってからなの?」
僧侶「バカ、声が大きいわよ武闘家。」ヒソヒソ
武闘家「あ、ごめんなさい。つい。」シュン
僧侶「(それにしても勇者ってこんなにビシッとしゃべれるなんて、感心ね。)」
王「では、めでたい宴は夜に行うとして。兵士たちによる勇者達の成果を讃える演奏だけでも披露させてくれ。では兵士たちよここへ!」
兵士たち「ははっ!」ズラズラ
賢者「すごい。私達のために?」
勇者「サマになっててかっこいいね!」
武闘家「私はお腹空いたよぉ。」
僧侶「はいはい、もう少し我慢ね。」
兵士たちの管弦楽器による演奏が始まった。壮大なメロディーに乗り、勇者達も夢心地で聞き入っていた。
しかし次の瞬間!王の間に激しい雷撃が降り注いだ!
ピカッ!
ドシャアアァァ!!!
ほんの刹那の一瞬だった。
降り注ぐ強烈な雷は演奏をしていた兵士たちを容赦なく撃ち抜いた。声を出す間もなく焼き殺され絶命したのだった。
数秒、その場にいた勇者達4人はなにが起きたのか、理解ができなかったが、目の前の惨状を見て我に帰った。
すぐさま、勇者のザオラル、賢者、僧侶のザオリクで兵士たちの蘇生を試みるが、効き目がまったくなかった。
王と王妃、大臣は腰を抜かしてしまい、放心状態だ。そんな時、どこからともなく暗くよどんだ声が聞こえてきた。
「くっくっく。」
勇者「誰だ!?どこにいるんだ?」
「わはははは!喜びの一時に驚かせたようだな?」
武闘家「ちくしょう!罪もない兵士さんたちを、許さない。出てこいって言ってんだー!!」
「威勢がいいな小娘。こんな人間どもにバラモスがやられるとはな...」
賢者「(な!なんて深く暗い声!?)」
「我が名はゾーマ。闇の世界を支配するもの。」
僧侶「(ゾーマ?闇の世界?なんのこと?)」
「このワシがいる限り、やがてこの世界も闇に閉ざされるであろう。」
「さあ、苦しみ、悩むがよい。そなたらの苦しみはワシの喜び。」
「命ある者すべてを我が生け贄とし、絶望で世界を覆いつくしてやろう!」
「我が名はゾーマ。すべてを滅ぼすもの。そなたらが我が生け贄となる日を楽しみにしておるぞ。わははははー」
邪悪な声は聞こえなくなった。
勇者「ゾーマ.....一体これはどうなってるんだろう。」
賢者「あ、足が。すくんで。ああっ」ヘタ
武闘家「賢者、大丈夫?それにしてもゾーマって?」
僧侶「初めて聞く名前よ。話の感じからバラモスはゾーマってやつの部下にすぎなかったっとことね....」
勇者「私達があれだけ倒すのに苦労したバラモスよりずっとずっと強いのね。」
賢者「バラモスが魔王なら、あのゾーマってやつは大魔王というところでしょうか?」
武闘家「大魔王でも魔王でもいいよ。とにかくゾーマを倒さないとまた世界が危ないってわけでしょ。」
勇者「そうだね。休んでるヒマはない!すぐに行かなきゃ!」
突然の大魔王ゾーマの出現により事態は急変してしまった。正気を取り戻したアリアハン王はゾーマの存在を口外しないように厳しく城内の人間に勧告した。
城下町には一部の噂が流れるだけにとどまり、混乱を招くことはなかったが、その邪悪なる空気を察する聖職者も少なからずいた。
世界はまだゾーマの存在を知らないがこのままではいずれゾーマの言う通り人間すべてを生け贄にし、世界を恐怖で覆うつもりだろう。
勇者達4人はすぐにゾーマのいる場所の手掛かりを探しにアリアハンを出て、以前訪れた、竜の女王の城にラーミアの背に乗り向かっていった。
商人は城内で起こったことの詳細は結局わからずじまいだった。ただ城下町では噂が飛び交う程度で、勇者達を心配しながらも、店の手伝いで忙しい日々を送っていた。
ただ、これまで商売事や町作りのことで頭がいっぱいだった彼女の心境の変化が現れたのもここ数日のことであった。
アリアハン ルイーダの店
商人「ルイーダさん、こんにちは!」
ルイーダ「ああ、誰かと思えば商人ちゃんじゃない。お久しぶりね。」ニコ
商人「あのう、今お仕事お忙しいですか?ちょっと聞きたいことがあって。」
ルイーダ「聞きたいこと?いいわよ。別に今はヒマだしね。」
商人「ほんとですか?ありがとう、ルイーダさん。」
ルイーダ「じゃあそっちのテーブルで話をしようかしら。今、紅茶入れるから座って待ってて。」
商人「わかりました。」ガタ
ルイーダ「なるほどね、転職を考えてるんだ?」
商人「はい。勇者達がなにやらわからないけど大変そうじゃないですか。」
ルイーダ「私も詳しくは知らないんだけど、魔王バラモスよりも強大な大魔王ってのが勇者達に宣戦布告してきたって話よ。たぶんあの子達が出ていったのはそれに関係してるわ、たぶんね。」
商人「大魔王....そんな強そうなやつが。だから私になにができるかわからないけど、勇者達の力になりたいんです!」
ルイーダ「わかったわ。じゃあ商人ちゃんはどの職に転職をしたいの?」
商人「勇者達も魔物もかなりレベルが上がってるみたいだし、武闘家や戦士がいいかな、とも思ってるんですが、魔法も使えるとさらにいいかな。」
ルイーダ「そうね、どの職も長所短所があるから悩みどころよね...あ、そういえば。」
商人「?」
ルイーダ「少し前に勇者ちゃん達がアリアハンに来た時に、私のところにも顔出してくれたんだけどさ。私に武闘家ちゃんがぼそっと漏らしてたのよね。」
商人「武闘家が?なんて言ってたんですか?」
ルイーダ「えと、たしか。『私ねルイーダさん、だんだん足手まといになってる気がするの。』って言ってたわ。それだけだったけど。」
商人「足手まとい?あの子がそんな事言ってたんですか?」
ルイーダ「え、うん。まああの時は少しだけお酒も入ってたみたいだし、気にしてなかったけれどねぇ。」
商人「(あの子がそんなことを愚痴るなんて、なかったな。)」
ルイーダ「旅の道中になにか思うころがあったのかしらね。」
商人「まあ、あの子のことだから心配ないとは思うけど。」
ルイーダ「そうね。ああ、話が脱線しちゃったわね。転職の話だったわね。」
マスター「おおいルイーダちゃん。すまんがあんたにお客が来てるぜ。」
ルイーダ「あ。お客?ごめんね商人ちゃん。ちゃんと話できなくて。このダーマ神殿のパンフレットをあげるわ。これに詳しく転職について書かれてるからよく読んでみてね~。」
商人「私の方こそ突然ごめんなさい。パンフレットありがとう!紅茶もご馳走さまでした。」
それから1週間後
アレフガルドの世界
ラダトームの城下町
町娘「まあ、あなた達、表の世界からいらしたんですの?」
勇者「そうです、まだここの世界のことがサッパリなんだけど。」
町娘「この世界は闇の世界アレフガルドよ、大魔王ゾーマに掌握されているわ。」
賢者「闇の世界...あのずっと暗いままなのですか?」
町娘「そう。ゾーマに光が奪われてからはずっと夜よ。たまらないわ。」
武闘家「じゃあそのゾーマってのを倒しちゃえばいいんだよね?」
町娘「無理よ。バラモス程度をやっと倒したくらいじゃあお話にならないと思うけど、お嬢さん?」
武闘家「く、くそっ。バカにして。」
僧侶「(...たしかにバラモス倒すのににあれだけ苦労したのに、大魔王なんて。)」
勇者「でもなにがあっても大魔王ゾーマを倒さなくちゃいけないんだ!」
町娘「ま、あなた達の意気込みだけは認めるわよ。せいぜい頑張ってね~。」スタスタ
勇者達はアリアハンでのゾーマ出現から、すぐに竜の女王の城に向かい、闇の世界と表世界を繋ぐ《ギアガの大穴》の情報を得ると、すぐにバラモス城の東に現れたその大穴に飛び込んだ。
すると降り立った場所は闇が支配する世界アレフガルドだった。勇者達は近くに見つけたラダトームという城下町に訪れていたのだ。町と城の人々は希望を失い、ゾーマを恐れていた。
勇者達はしばらくラダトーム周辺で情報を集め、かつ魔物と戦いレベルを上げようと奮戦していた。
ラダトーム周辺の森
モゾモゾ
賢者「なにか来ます!」
勇者「な、なにこれ?地面から手がたくさん出てるよ~。」
マドハンドが8体あらわれた
武闘家「とにかく先手必勝だよ!えりゃあ~!」ダッ
ズババッ!
武闘家の攻撃
マドハンドAにダメージ。
マドハンドAをやっつけた
マドハンドBは仲間を呼んだ
だいまじんがあらわれた
僧侶「な!なんてデカさなの?」
勇者「半端ないね、こんなの。よし、喰らえー!」ダッ
ガキィ!
勇者の攻撃
だいまじんに小ダメージ
マドハンドCは仲間を呼んだ
だいまじんBがあらわれた
賢者「これじゃキリがない。」
武闘家「とにかく倒さなきゃ。うりゃあ~!」ダッ
ズババッ!
武闘家の攻撃
マドハンドBにダメージ
マドハンドBをやっつけた
マドハンドDは仲間を呼んだ
だいまじんCがあらわれた
僧侶「ダメよ武闘家!あいつは倒すたびにだいまじんを呼ぶわ。私にまかせて!」
僧侶はヒャダインを唱えた
氷の刃が魔物を襲う
マドハンド全匹にダメージ
マドハンドをやっつけた
勇者「僧侶ナイス!あとはこいつらだけだ。」
賢者「武闘家さん、危ない!」
武闘家「!!よっと。」
だいまじんAの攻撃
武闘家はひらりとかわした
武闘家「へっへーだ。スキだらけだ。くらえ~!」ヒュン
ズドン!!
武闘家の攻撃
だいまじんAにダメージ
だいまじんCの攻撃
痛恨の一撃!
ズドン!
武闘家「うわあぁぁぁ~!」バタッ
勇者「武闘家ぁ~!!」
武闘家「ぐあぁ!ちくしょう!」ハァハァ
勇者「起き上がっちゃだめ!じっとしてて。んー」ブツブツ
勇者はベホイミを唱えた
武闘家のキズが回復した
武闘家「サンキュー、勇者。迷惑かけてごめん。」
勇者「うん、気にしない気にしない。」ニコッ