エピローグ
勇者達が大魔王ゾーマを倒して3ヶ月が過ぎた。アレフガルドにも朝が来るようになり、人々も活気を取り戻しつつあった。
ロトの称号を得た勇者は、しばらくはラダトーム城にてその栄誉を称えられ、外出もできない状態だった。
そんな状況に嫌気がさした勇者はある時、城を抜け出し流浪の旅人となった。
上の世界と下の世界を自由に行き来し、時には仲間に会いに行くなど気ままな生活を送っていた。
大魔王を倒した勇者の仲間達は各々、故郷に帰るもの、新天地で暮らすもの、様々であった。
武闘家は元々の読書好きが高じて、ラダトーム城の図書館にて
司書になるため先輩司書の指導のもと、勉強をしているという。
彼女曰く「戦いよりも落ち着いて読書をした方が性に合ってる」とのことだ。
戦士は自分の故郷であるレーベの村にて、年老いた師匠に代わり
魔法教室を開業したようだ。彼女曰く「戦士の格好じゃ風邪引いちゃう」とのこと。
一方、僧侶はあっさりと武闘家に戻り、アリアハンの自分の母
が師範をつとめる武術道場で師範代として乱暴な活躍をしていた。
彼女曰く「1人旅は一生したくない。1人じゃつまらないしね」と話した。
そして賢者。彼女は悩みに悩んで賢者ではなく再び商人
になることを選んだ。自分が作り上げたホープバークにて自分
の道具屋を開業したのだ。
ホープバークの町民は商人の復帰を心から歓迎した。
彼女は本当の意味でホープバークの仲間になったのだった。
そんなある日、勇者はホープバークに立ち寄った。
ホープバーク 商人の店
商人「ふむふむ~。ポルトガの物価が急騰ねー。どこもかしこも不況なのは変わらないのねぇ。」
商人「とりあえずここは不況の煽りは受けていないみたいだけど。」ブツブツ
勇者「よっ!商人儲かってる~?」ヒョイ
商人「うわ!びっくりした!なんだ、勇者か~。」
勇者「なんだ、はないでしょ。人がちょくちょく来てあげてるのに。」
商人「ふふふ、ごめんごめん。で、今日はどうしたの?」
勇者「は?…………ブツブツ(ギラの詠唱)」
商人「え、あ!ああ!そうか。チョコね、チョコ。」アセアセ
勇者「今。素で忘れてたよね?」ジロ
商人「あはは。ごめん。」シュン
商人「なにせここのところ、世界中から色んな商品を仕入れてるからその整理に追われててね~。」ゴソゴソ
勇者「そうだよね。商人忙しいもんね。賢者やってた時より忙しいんじゃない?」
商人「うん、そうかもね。ええと、あったあった!はい。」トン
商人はカウンターに小さいダンボール箱を置いた。
勇者「これね。たしかにお預かりします、っと。」
商人「どう?前回の時もあの子喜んでくれてた?」
勇者「うん、そりゃもう大喜びでさ。あの子、『お姉ちゃん、届けてくれたお礼だよ。』って
私にも一箱丸々くれたんだよ。」
商人「そっか.....喜んでくれてるんだ。よかった。」
勇者「いいの?毎回毎回。あのチョコはポルトガの高いチョコなんでしょ?」
商人「まあね。あの子には感謝してるんだ。あの時にあの子が私に声をかけてくれなか
ったら、あの男のことを追うことができなかっただろうしね。」
勇者「……………」
商人「でなければ賢者としての私はそこで終わってたかもしれなかったから。」
勇者「そうそう。この前レーベに行った時にね魔法使いがね、ふと思い出してたように
言ってたんだけどさ。」
商人「なになに?」
勇者「ゾーマの城でさ玉座の裏の階段を商人が見つけたじゃない。なんでわかったのかな~って。」
商人「ああ~あれね。大したことないんだけど。」
商人「私がここでイエローオーブをさ家の庭に隠してたんだけど、あれね本当は町長の家のあの椅子の裏に
隠そうと思ってたんだよ。
商人「なんか隠すにはちょうどいいかなって。ただおじいちゃんや青年さんいたしムリだったから。」
勇者「ああー!そういうことなんだ。自分の経験上ってことか。納得。」
商人「ぜんぜん企業秘密じゃないよねぇ、えへへ。」
商人「僧侶もさ、今は司書さんとしてがんばってるんでしょ?」
勇者「まだ、司書のタマゴみたいだけどねぇ。」
勇者「あ、そうだ。なんかね次の休みの日にここに来たいって言ってたよ。」
商人「あ!そうなの?嬉しいなぁ楽しみー。」ワクワク
勇者「なんでも『商人さんの手作り野菜スープが食べたいんです~』だって。」
商人「ふ~んじゃあ腕によりをかけて作らなきゃね。案外大食いだよね僧侶。」
勇者「あれで太らないんだもん、羨ましいったらないない!」
商人「同感!あはは~。」
商人「そうだ!勇者。聞いてよ。武闘家が最近やたら暇だ暇だって言って遊びに来るんだよ。」
勇者「え、いいことじゃないの?」
商人「良くないよ!だって毎晩だよ!」
勇者「え?毎晩?それはまた極端な....」
商人「夕飯食べに来たよーって。私の家は食堂じゃないってのに。」
勇者「たぶん、武闘家は寂しいんじゃないの?幼馴染が離れて暮らしてるから。」
商人「そういうもんなのかなぁ。」
勇者「あれ?そういえばどうやって来てるの?毎晩。ルーラ使えないよね?」
商人「はぁ...レーベに行って魔法使いに、無理やり教えてもらったんだって。」
勇者「あ、そうなんだ、はは....」
勇者「あ、ねえ商人~~。」ニヤニヤ
商人「な、なによ、その怪しい目つきは。」
勇者「青年くんとはどうなったのさ?」ウリウリ
商人「え!あ、ああ。あの、まあまあよ。」タジタジ
勇者「なにそれ、まあまあって。」ニタニタ
商人「ま、まあ、たまにだけど一緒にご飯食べに行ったりとかはするかなぁ。」
勇者「思いっきりデートじゃない!パチパチパチパチ!」
商人「わーー!声が大きいよ勇者。恥ずかしいよ。」
勇者「でもよかったね。なんか商人が嬉しそうにしてるの見ると私も嬉しいもん。」
商人「あ、ありがとね。私も勇者と仲間になれて嬉しいよ。」
勇者「う~~。もう旅は終わったんだから『友達』ってのがいいかなぁ。」
商人「私達は『仲間』で『友達』ってやつかな。これからも、ね。」
勇者「そうだね。………ってそろそろ行かなくちゃ。ごめんね長話して。」
商人「ううん。来てくれてありがとう。じゃあチョコのお届けお願いね。」ニコッ
勇者「りょうか~い!じゃあ商人、青年くんとお幸せにね~」ニヤニヤ
商人「ブツブツブツブツ(イオラの詠唱)」ムッ
勇者「あははー!ごめんごめん。それじゃーね商人!!」バイバイ
商人「(ありがとう。)」
勇者は商人に託されたチョコレートの箱を大事に抱えて
店をあとにした。すると前から見慣れた老人と青年が歩いてきた。
勇者は軽く二人と挨拶し、別れた。
二人が商人の店に入っていくと商人の明るい元気な声が町に響いた。
「いらっしゃいませーーー!!!」
ホープバークは今日も平和だった
おしまい
物語終了時の各キャラのレベルと職業
(レベルは最終の一つ前の職業でのレベル)
【勇者♀】
転職歴なし
Lv.50
【武闘家♀】
武闘家→僧侶→武闘家
Lv.30
【司書♀】
僧侶→賢者→武闘家→司書(書類上では僧侶登録)
Lv.44
【魔法使い♀】
魔法使い→僧侶→戦士→魔法使い
Lv.43
【商人♀】
商人→賢者→商人
Lv.38
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