女商人「やっと私の出番ね」ルイーダ「あ、登録しただけよ」女商人「えっ?」 6/21

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翌朝

ホープバーク 町の入口

勇者「では、行ってきます!」

賢者「短かったけど良い休息を取れました。宿屋の方によろしくお伝えください。」

商人「うん、わかった伝えておくよ。みんなこそ来てくれてありがとね。」

武闘家「私も楽しかったよ~、久しぶりに商人の顔も見れたし、おじいちゃんも元気そうだし、宿屋の食事は美味しかったし、教会のおばちゃんはパワフルだし、空気はおいしいし、」

僧侶「多いな!」

商人「じゃあ体に気をつけて、みんな頑張ってねー!私ももっともっと頑張って、大きな立派な町にするからさ。」

勇者「うん、また遊びにくるね。じゃあ!またね~!」

再び、勇者達は旅立っていった。

勇者達が旅立って、数日。ホープバークの住民待望の酒場が完成した。酒場だけでなく、ステージや小さなカジノなども設置してちょっとしたアミューズメント施設としてスタートした。

酒場は大いに賑わい、移住民がほとんどのホープバークでは住民同士の親交の場として、連日連夜大盛況となった。

酒場のおかげもあり、住民だけでなく、外からの観光客もたくさん訪れることも多くなった。おまけ程度につけたカジノも辺境の地にカジノがある、という珍しさもあり、口コミで広まっていった。

しかし、酒場による利益があまりにも大きくなったせいか、町の長である商人と住民との間で意見が食い違うという事態が起こりはじめていた.....

町に酒場ができて4ヶ月

ホープバーク 町長の家

商人「だいぶ、住民も観光客もだいぶ増えてきたし、また増税したいところよね。」

老人「……ふむ。またかの。」

商人「なにか不満がありますか?これからも町の発展のためにはお金は必要ですよ。」

老人「おぬしが酒場が出来てから町長として就任して4ヶ月ほど。自分の店いいのか閉めて。」

商人「最初はやれるかとは思ったけど、忙しくて無理ってわかったのよ。私が町長として専念できる方がいいと思うけど。」

老人「……そうじゃの。」

ガチャ

兵士「失礼します、町長。お客様がいらしていますが。」

商人「客?わかりました。通してください。」

老人「商人、ワシは小屋戻るぞ。ではの。」

商人「ええ、引き続きお願いしますね。」

老人は客人として見えた、商人風の男とすれ違った。軽く会釈をしたが、その口元には小さく笑みが見えた。老人はふと胸騒ぎを覚えた。

商人風の男「いやぁ~はじめまして!ワタクシ、世界中を商売しながら旅して回っている者です。風の噂で耳にしたこのホープバークを作ったという商人様にお会いしたく来させていただいた次第です。」

商人「はい、それはありがとうございます。ごゆっくりしていってください。」

商人風の男「はい。ぜひとも。商人さま、いや町長さまに良いお話がありまして、いかがでしょうか?」

商人「良い話?それは商売の話ですか?」

商人風の男「ええ、まさにそうです。」

商人「兵士さん、あなたは席を外していてくれますか?」

兵士「え、わかりました。失礼します。」ササッ

商人「それでどんな話なんですか?」

商人風の男「これです。」サッ

男は掌に1つ小さく黒光りする四角いものを乗せて、商人に見せた。かすかに甘い香りがする。

商人「これは、たしか。チョコレートというものでは?」

商人風の男「おお、ご名答!そうです。よくご存知でいらっしゃる!」

商人「以前、私の仲間が遠方の国で食べたと言っていたので、そのことかと。」

商人風の男「なかなかに高級な菓子でして、ロマリア、ポルトガ地方で作られているものです。」

商人「へぇ~、すごく美味しそうですね。そしてこのチョコレートをなぜ?」

商人風の男「そこです。なんでもこの町にある酒場の中のカジノは、大盛況のようですな。」

商人「ええ、おかげさまで。辺境の町にあるカジノ、という珍しさが受けているようです。」

商人風の男「そのカジノで楽しむ皆さんにお菓子として提供するのです。」

商人「カジノのお客様限定で、ということですか?」

商人風の男「ええ、高級感のある菓子ですから、カジノで楽しむ裕福な方々に受けるのではと思いましてね。」

商人「なるほど...(上手くいけばさらに利益を上げられるかもしれないわね)」

商人「ただ、高級なものでは安定した仕入れができますか?」

商人風の男「その事はご心配なく!私の息のかかっている業者がポルトガ近辺にございます。」

商人「そうですか。では早速契約をさせてください!きっと大きな話題にもなるでしょう。」

商人風の男「あ、ありがとうございます!さすがにお若いのにお目が高いですな~。」ニヤッ

町長となった商人は、旅の商人という男から高級菓子であるチョコレートを仕入れることを決めた。老人はこの件はよい顔をせずに反対したが、商人の強い説得で容認した。

数日後、カジノ限定でのみこの高級菓子チョコレートが客に出されはじめた。するとその美味なる香りと甘さと味が客の間で話題となり、口コミにより世界中に拡大した。

町長の思惑通り、カジノが産み出す利益はさらに増えていく。ただやはりそれに比例するように、一般町民からは反発が起きるようになっていた。

カジノにチョコレートが出されるようになって2ヶ月

ホープバーク 町長の家

町長「ねえ、これは一体なんなの?こんなに投書が来てるのはなぜ?」

兵士「連日、表の投書箱に意見が入れられているようです。」

『カジノができてから、町の雰囲気が悪くなった』

『毎日観光客がひっきりなしで、のんびり過ごせない』

『カジノで利益が上がってるはずなのに、我々の税金負担が増えるのはなぜ?』

『カジノを閉鎖してほしい 酒場だけでいい』

『町長は私達一般民を大切にしてくれない』

『夜になると町の隅で男たちがたむろしていて物騒だ』

『チョコレートの味が落ちた』

町長「………なんで?私は町を大きくしたいだけなのに。」

老人「商人よ、この最後の投書はどういう意味なんだ?」

町長「ん?チョコレートの味が落ちた?どういうことなのかな...」

町長「っ!?まさか...」ガバッ

老人「どうした?」

町長「ちょっとカジノに行ってきます。確かめたいことがあるから!」

ホープバーク 酒場内

ドンッ

町長「ごめん!誰かいる?」

マスター「あ?まだ昼間だぞ。誰かと思えば、町長さんじゃねえか。」

町長「マスター、お久しぶりです。あの、下のカジノは...」

マスター「ああ、まだじゃないか。カジノはここより遅くからだから今は誰もいないだろうさ。それよりもさ、もっと税金を下げてはもらえないか?俺たちはギリギリの生活なんだぜ?」

町長「...それはできない相談、です。」プイ

タッタッタッ

マスター「ふう、前はあんな女の子じゃなかったのにな。この町はそろそろ危ないな...」

町長は酒場を通り、奥にあるカジノに通じる階段を下りていった。

ホープバーク 町長の家

老人「あいつ大丈夫だろうか。ワシ心配」

宿屋の青年「大丈夫ですよ。おじいさん。ただ彼女は忙しすぎるだけですよ。」

老人「最初はあんな風にお金に執着するようなやつじゃない。もっと柔軟なやつだった。」

青年「う~ん。僕ら一般民から徴収する税金が高すぎるのはたしかです。」

青年「僕の宿屋も最近はカジノに来るお客さんが泊まることがほとんどです。宿泊費も高騰してるのもあるとは思うけど。」

老人「ううむ、そろそろワシ達で商人にはっきり言った方あいつのためだな。」

コンコンッ

兵士「失礼します。老師どの、町長さま宛にお手紙が届きました。」スッ

老人「手紙?どれ。これは?」

青年「誰からなんですか?」

老人「これはおそらく商人の....」

ホープバーク カジノ内

カジノ内は静まりかえっていた、まだ誰1人いないようだ。町長は1人、暗い中カジノ内を歩いていた。

カジノ内はこの建物ができた直後に入ったきり一度も来ていなかった。そんな暇がなかったからだ。

コイン購入カウンターの裏にバックヤードに繋がるドアがあるのを見つけ恐る恐る入っていく。

町長「ここかな?なんだか乱雑に書類が散らばってるわね。」

町長「どこかに、どこかにあるはず。」

町長「ん?この箱。あの時のチョコレートの箱に似てる...でも、なにか違う。」

町長「あっ、これは。」ペリッ

町長「やっぱり....騙されたのねわたし。」

町長がカジノのバックヤードで見つけた、チョコレートの箱はニセモノだったのだ。箱にプリントされていたチョコレートのブランドのロゴが違うのである。

一見しただけではわからないが、ニセのロゴの上からホンモノのロゴのシールが貼られているのだ。

実際に客に出すときは中身のチョコレートだけを別の容器で出すので誰も気が付かなかったのだ。ただ味だけはホンモノとニセモノでは歴然の差があり、それに違和感を持った客が投書したのだろう。

町長「いったいいつから、ニセモノに入れ変わったんだろう?」

町長「どこかに仕入れの帳簿がないかしら。」

町長「....どこにもないわね。仕方ない、一度引き上げよう。」

町長「あの男、許せない。ちくしょう、ちくしょう...」グスッ

町長はカジノから引き上げて、家に戻った。

ホープバーク 町長の家

ガチャ

老人「おお、心配したんだぞ。大丈夫だったか?」

町長「………………」

青年「どうしたの?おじいさんとあなたの事心配してたんですよ。」

町長「…………りにして。」

青年「え?」

町長「ごめん、ひとりにして。二人は出ていって、お願い。」

老人「おい、なに言ってるんだ。お前に手紙が来て...」

町長「いいから!お願い。」

青年「....おじいさん、行きましょう。」

老人「むう……」

町長「……………」

バタン

《そしてこの日の夜中 この町で革命が起こった》

革命発生から1週間

ホープバーク 入口

僧侶「ねえ、なにか変な感じがしない?」

武闘家「え?なにが?」

賢者「……そうね、僧侶の言う通りで町の雰囲気がなにか変ね。勇者さまはなにか感じません?」

勇者「う~ん。なんかどんよりしてるよね。人は多いんだけど。」

武闘家「じゃああそこにいる兵士さんに聞いてみようか~。あのうすみません!」

兵士「ん?観光客か?悪いことは言わん、今この町は革命が起きてな、町を統べる者がいないのだ。」

勇者「えっ!?」

僧侶「か、革命ですって?」

賢者「一体なぜ?革命なんてそう起こることじゃないですよ!」

兵士「うむ...私も少し前に雇われてここに来たので詳しい事はわからないんだが...すまない。」

武闘家「…………」

勇者「わかりました。どうしようか、おじいさんも小屋にいないし...」

賢者「…そうだ。宿屋の青年さんならなにか知ってるかもしれませんよ!」

僧侶「そうね、行きましょう!」

勇者達は急いで宿屋に向かった。

ホープバーク 宿屋

ガチャ!

勇者「お兄さん、いませんかー?」

青年「!?あ、勇者さん!」

僧侶「よかった、いてくれたみたいね。」ホッ

青年「皆さん、来てくれたんですね!助けてください、彼女が!商人さんがっ!」

賢者「えっ?」

武闘家「商人が!?どうしたの?ねえ!ねえってば!」

青年「今は町外れの牢屋に投獄されています....」

勇者達がホープバークを訪れた7日前の夜中、町では革命が起きた。

町の一部の住民が結託して、夜中に町長である商人の家と、老人の小屋を襲撃したのだった。当時、商人は眠りに入っていなかったが、襲撃を寸前まで気付けずに数名の男に捕らえられた、なぜかまったく抵抗はしなかった

そのまま、町外れに商人自身が作った牢屋に入れられたのだ。

老人は小屋で寝ていたが、襲撃を受け、かなりな抵抗をしたようだが、屈強な男たちには敵わず、そのまま気絶してしまった。

翌朝、革命を起こした男達のリーダーが町全体に対し、声明を出した。

『我々はこんな抑圧された生活に耐えることはできない!』

『カジノをたしなむ富裕層ばかり優遇し、一般民である我々に高い税を課し、苦しめた町長は投獄した!』

『しかも町長は密かに莫大になった利益を自分のものとし、隠していたのだ!断じて許されるべきではない!』

『町の皆。これからは自由な生活が待っている!この私が新たな町長となり皆を先導していこうと思う!』

町の住民は、男の声明を聞き、一斉に賛同した。たった数時間で商人と老人が一から作り上げた町が終わりを告げたのだった。

ホープバーク 町外れの牢屋

見張り「ん?なんだお前らは。あの女に面会か?」

勇者「そうです。商人に合わせてください!」

見張り「だめだな。あんな犯罪者に簡単に合わせるわけにはいかねぇな。」

武闘家「なんだと!?私の親友をそんな風に言うと許さない!」ガバッ

賢者「ぶ、武闘家さん。落ち着いて。暴力はだめですよ。」

武闘家「くっ、だけど賢者。」

見張り「くっくっく、出直しな。」

僧侶「………」スッ

見張り「ん?なんだ姉ちゃん、やんのか?」

僧侶「これで面会させてくれないかしら?」スッ

見張り「あ?これっぽっちじゃ足りねえなぁ。」

僧侶「じゃあこれでどう?」スッ

見張り「だからこれっぽっちじゃ足りねえと何度もいわ...あっ!」ダラダラ

ブツブツブツブツ

僧侶「私を怒らせないで、死にたい?ザキをプレゼントしてあげようか?」ヒソヒソ

賢者「(あ、まさか僧侶ったら...)」

見張り「あ、ああ。そ、そこの階段を下におりな。」ガクガク

僧侶「そう、ありがとう。みんな行きましょう。」ニコ

武闘家「う、うん。(こわ...)」

賢者「またやっちゃった...」

勇者「よし行こう。」

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