女商人「やっと私の出番ね」ルイーダ「あ、登録しただけよ」女商人「えっ?」 13/21

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それから約1週間後

アレフガルド

リムルダールの町

勇者「おじさん。こんにちはー!」

町の男「あれ?あなたたちは。しばらく見ないと思ったけど。」

武闘家「先日は貴重な悟りの書を譲っていただいてありがとうございました。」

戦士「おかげで仲間が一人賢者になることができました。」

町の男「おお、そうでしたか。それはお役に立てたようでよかった。」

賢者「初めまして、私が転職できたのもおじさんのおかげです。感謝します。」ペコリ

町の男「いえいえ、感謝なんて...いいんですよ。それでこの世界が救われるのなら安いものです。」

賢者「私、この世界は初めて来て驚いたんですが。勇者達の言うようにずっと暗いままなんでしょうか?」

町の男「そうです。ゾーマがアレフガルドに現れてからはずっと暗いまま、朝はきません。」

武闘家「前回、ラナルータを唱えてみたのですが、効果がありませんでした。これはやはり...」

戦士「...ゾーマの仕業というわけよね。大魔王ゾーマ、か。」

町の男「世界中の人間は希望をすっかり失っています...勇者さま、皆を、世界を、大魔王から救ってください。」ペコ

勇者「うん。まかせて、おじさん。絶対に大魔王ゾーマを倒してみせるから!」

戦・武・賢「(…………)」コクッ

町の男「おねがいします。」

リムルダールの町 宿屋

勇者「今のとこ、私達が手に入れたのはこの太陽の石と雨雲の杖、あとこの妖精の笛...」

戦士「ルビスさまというこの世界を創造した精霊を復活させないといけないのよね。」

賢者「勇者。マイラっていう町の道具屋にオリハルコンを預けてるんでしょ?そろそろ行かないと。」

勇者「あ、そうだった~。まだまだやらないといけないことが沢山あるなぁ。」

武闘家「そうですね~。一刻も早くゾーマを倒したいところですけど。今のままでは進めませんし。」

勇者「じゃあいっそのこと、二手に別れて動こうか?その方が楽だし早いよ。」

戦士「戦力は半減するけど...たしかにその方が良さそうね。全員ルーラも使えるしなにかあればここに戻れば大丈夫かな。」

リムルダールにて作戦会議を開いた勇者達は、二手に別れて行動することになった。

ドムドーラで偶然見つけた伝説の鉱石オリハルコンを預け、剣を打ってもらっているため受け取りにマイラの道具屋に行くのは勇者と賢者。

ゾーマにより封印されていた精霊ルビスを復活させるために、そのマイラの西にそびえ立つ塔に行くのは武闘家と戦士。

それぞれ、宿屋で休んだあと目的地に向かっていった。

マイラの町 道具屋

勇者「こんにちは~。この前、剣をお願いした勇者といいますが。」ヒョイ

道具屋の主人「ああ!勇者さん。ちょうどいいタイミングでしたね、つい先刻出来上がりましたよ!ほらっこの通り!」ギラッ

賢者「(この光!...すごい力を感じる!)」

勇者「わあ~!あの青い石っころがこんなカッコイイ剣になっちゃうなんてすっごいなー!」ジロジロ

賢者「い、石っころ...(オリハルコンっていうのはものすごい貴重なのになぁ)」ガクッ

主人「ほら、勇者さん。持ってごらんよ。手に馴染むといいけど。」スッ

カチャ

勇者は主人から出来上がったばかりの剣を受け取った

勇者「ん!」

勇者「(………なんだろこの剣。力が湧いてくる。手にもこんなにしっくりくるなんて。)」

賢者「大丈夫?勇者?どうしたの。」

勇者「え。あ、ああ大丈夫だよ。なんか手にした瞬間に全身に力が湧いてきたんだ。」

主人「そうだろ?私も打っている時に何度も不思議な力を感じてね。こんな硬い石なのに作業がサクサクだったよ。」

賢者「……ねぇ、勇者。ちょっと私にもその剣見せてくれない?」

勇者「いいよー。はいどうぞ。」カチャ

賢者は勇者から剣を受け取り、剣をじっくりと見定めた。

賢者「わっ。」ビクッ

賢者「(ほんとだ。手にした瞬間に力が湧いてくる感覚...あと僅かに感じる魔力はおそらく...)」

賢者「はい勇者、返すね。」スッ

勇者「ありがとう。なにかわかったの?」

賢者「うん。たぶんこの剣はあなただけしか使いこなせない、勇者のための剣。」

勇者「私だけの、剣?」

賢者「勇者以外でももちろん持つことはできるけど、その秘められた力を最大限に発揮できるのはあなただけだよ。」

主人「へえ~。あなたは武器にお詳しいんですね。」

賢者「あ、まあ。つい最近までは商人でしたから私。武器や道具の鑑定が得意なんです。」

主人「商人さんだったのかい?なるほど、合点がいきます。」

賢者「ああ、あと勇者。その剣には魔力が込められているみたい。あなたの魔力を込めて降るとなにかしらの魔法と同じ効果が出るはずよ....ってここじゃダメーー!」

勇者「じゃあ。え~いっ!!へっ?」ブンッ

ビュウ~~~

シュゴゴゴーーー!

勇者はおもわず剣を振りかざした。

すると、剣から大きな竜巻が巻き起こった。

ドガンズッドーン!

ドガガガガガ!!

巻き起こった竜巻は建物を破壊し、消えていった。

賢者「.....あちゃ~」ガックリ

勇者「あ、あははー!また私ったらやっちゃったね~。」ガックリ

主人「……………」ガックリ

勇者「あ、あのおじさん。ごめんなさい!お店こんなにしちゃって。」

賢者「私も不注意でした。本当にすみませんでした!」

主人「………いいんですよ。私の打った剣が勇者さん達の力になってくれれば。私も元鍛治屋として嬉しい限りですし、はは。」

勇者・賢者「本当にごめんなさい。」ペコペコ

二人は剣を打ってくれたお礼と店を半壊させたお詫びにと、持っているゴールド全部を主人に渡し、店を出た。

ふと店を出る直前に主人が賢者の元にかけより耳打ちした。

主人「最近、なにやら表世界から来たっていう商人風の男が各地で怪しい商売をして廻ってるって噂があります。あなたも元商人ならなにか知ってるかと思ったんですが。」

勇者と賢者はマイラで勇者だけの最強の剣《王者の剣》を手に入れた。

その足で、マイラの西の島に立つルビスの塔に武闘家と戦士に加勢するため向かった。

勇者「賢者。さっきおじさんに耳打ちされてたけどなんだったの?」

賢者「ん?別に大したことないよ。商売人同士のちょっとした情報交換ってやつかな。」

勇者「ふ~ん。商人は賢者になってもああいう風に鑑定とかできんだねー。すごいね~。」

賢者「ふふ、そんなことないよ。ただの癖みたいなものだから。」

賢者「さて、武闘家と戦士に早く加勢しに行かないとねっ!」タッタッタ

勇者「りょ~うかい!」タッタッタ

賢者「(商人風の男か.....ま、さかね...)」

ラダトームの町 宿屋

勇者「んじゃあその精霊ルビスさまっていう人がこの世界を作った人なんだ?」

戦士「ええ、彼女自身の口から聞いたから。本当にキレイな人だったわね。」

勇者「すんごいんだね~、世界作りなんてったら町作りも真っ青だね、賢者。」

賢者「いやいや、勇者。私のと比べられてもスケールが違いすぎて困るんだけどね。それより武闘家、それが...」

武闘家「はい、これがルビスさまから渡された《聖なるお守り》というものです。」

キラッ

勇者「キレイだねー。これがあればゾーマの城に行くことができるんだよね?」

戦士「おそらくね。それは勇者が持っておいて、それが一番いいわ。」

武闘家「そうですね、これは勇者さまにお渡ししておきますね。」ニコ

勇者「うん、わかった。しっかり持ってるよ。」チャキ

賢者「じゃああとはゾーマを倒しに行くだけってことになるの?」

戦士「そうなるかな、必要なアイテムもないし。武器も防具も最強のものが揃っているしね。」

武闘家「勇者さまの最強の剣も今日揃ったことですし。」

勇者「いよいよだ。ここまで短いようで長かったね。近いうちにゾーマの城に突入するよ!」

武闘家「はい!みんなで力を合わせて絶対にゾーマを倒してやりましょうね!」

戦士「そうね。これで最後の戦いになるのね。すべてをぶつけて戦う。」

賢者「....私も頑張るわ。」

勇者「(賢者?)」

翌日1日は完全休養の日とし、各自好きなことをして過ごすことにした。

勇者はとにかく1日ずっとボ~っとしていたいと。

武闘家は新聞を読みたいのと趣味の読者のためラダトーム城の図書館に。

戦士はこれまでの疲れを癒すのと、体の冷えのためマイラの温泉に。

それぞれ向かっていった。

一方、賢者はちょっと用事があると、3人よりも早くラダトームの町を出ていった。

ドムドーラの町 牧場

牧場主「商人風の男だぁ?」

賢者「はい。この町でそういう男を見たりしていませんか?」

牧場主「う~ん、俺は毎日町に出荷や買い出しがあるから行くけどよ、そういったやつは見かけねぇな。」

賢者「そうですか...すみませんお仕事中に。」

牧場主「構わねえよ。どうせ、仕事してたって世界が終わっちまえば関係ねぇしな、ヘン。」

賢者「……………」

賢者「(ここもダメかぁ。単なる噂なのかな、やっぱり。)」

女の子「ねぇねぇ、そこの髪の赤いお姉ちゃん!」

賢者「え?(女の子?)」

女の子「私知ってるよ、商人さんみたいな格好した男のひと。」

賢者「!?」

賢者「えっ?あなたその男を知ってるの?」ガバッ

女の子「うん、私ここの娘なんだけどちょっと前にお父さんに付いて町に行った時にお姉ちゃんが言ってたみたいな商人さんの格好をしたひとに話かけられたんだー。」

賢者「そ、その男はなんて言ってたかわかるかな?」

女の子「うんっとね~『お嬢ちゃんは大魔王が怖いかな?ずっと怖いのは嫌だよね?そんな時はこれを食べれば怖い気分を消してくれるんだよ』って。」

賢者「これを食べれば、って。なにかもらったの?」

女の子「うん、ちょっと待ってね。お姉ちゃんにも見せてあげるから。」ゴソゴソ

女の子「あったあった。これだよ。」サッ

少女は小さい手提げかばんから包み紙に包まれた、小さく黒光りするものを出して手の平に乗せた。

賢者「あ!これは...やっぱり。」

女の子「お姉ちゃんこれ知ってるの?甘くて美味しいんだよ~。食べると私、嬉しいキモチになるし。」

賢者「あのさ、1つお姉ちゃんにもくれないかな?だめ?」

女の子「いいよ!お姉ちゃんかわいいから1つあげるね!はいっ。」サッ

賢者「ありがとう、お嬢さん。」ナデナデ

賢者「わざわざ呼び止めて教えてくれてありがとう。」ニコ

女の子「えへへへ。どういたしまして。じゃあね~お姉ちゃん。」バイバイ

賢者「(形はあの時の物と同じようだけど.....引っ掛かるのは)」

賢者「(食べると怖い気分を消してくれる....)」

賢者「(子供相手だからか、単なる言葉のあや、かわからないけど。)」

賢者「(調べてみた方がいいね)」

賢者「(こういう使い方ができるかわからないけど、やってみよう)」ブツブツ

賢者は少女にもらった黒光りするものをグッとにぎりしめて、集中した。

賢者「(万物の神よ、我の手中の物の正体を示せ『インパス』)」

賢者はインパスを唱えた

賢者は握っている手を開いた

その物は赤く光っている

賢者「なんてこと....これはおそらく。」

賢者「(なにかしらの薬物が入ってる。)」

賢者「言葉巧みに、子供になんてものを!許せない。」

賢者「(そうだ。さっきの女の子はどこに?あのまま食べ続けたら危ない!)」キョロキョロ

賢者は暗い中、あたりを見回した。すると牧場の柵の近くで馬と遊ぶ少女を見つけ、すぐに駆け寄った。

賢者「お嬢ちゃん!さっきの甘いのはいくつもらったの?誰かにあげたりした?」ガシッ

女の子「えっ?まだ一箱分あるよ。あげてないけど、あのひとは『お父さんやお母さんにも勧めてあげてね』って、言ってたよ。」

賢者「そう、それならよかった。いい?お姉ちゃんの言うことをよく聞いて。ね?」

女の子「う、うん。怖いよお姉ちゃん....」ウルウル

賢者「あ、怖がらせちゃってごめんね。でもとっても大事なことよ。」ニコ

女の子「うん、わかったよ。」

賢者「今、私やあなたのいるアレフガルドっていう世界はゾーマっていう大魔王のせいでみんなが希望を無くしているの。」

賢者「私はその大魔王を倒すために遠いところからやってきた勇者さまの仲間なの。」

女の子「ゆうしゃ?じゃああの悪者をやっつけてくれるの?」

賢者「そう。だからもうこんな暗いままの世界ともお別れできるんだよ。」

女の子「ほんとに?じゃあ町のお外にも遊びにいけるようになるの?」

賢者「うん、もちろん。」ニコ

賢者「だからあなたがもらったっていうそのお菓子は私達が悪者をやっつけるまで我慢できる?」

賢者「だって大魔王が怖いからってそのお菓子に頼るなんてヘンでしょ?」

女の子「そうだね。美味しいから食べたいけど...我慢する。」

賢者「うん、エライエライ!」ヨシヨシ

女の子「じゃあそうなるまでお姉ちゃんが預かってて。それなら私も大丈夫だから、えへへ。」スッ

賢者「ありがとう。じゃあお姉ちゃんがしっかり預かるから、悪者を倒したら真っ先にあなたに返しにくるね。」

女の子「絶対だよー。お姉ちゃんも頑張ってね、応援してるから。」

賢者「うふふ、ありがとう。いい子ね。」

女の子「ねえ、お姉ちゃんはなんていうの?」

賢者「あ、私?勇者の仲間の賢者だよ、よろしくね。」ニコッ

賢者はラダトームを出たあと、ルーラでマイラ、リムルダール、ドムドーラと巡りついにマイラの道具屋の主人が行っていた商人風の男の手がかりを掴んだ。

ドムドーラの牧場に住む少女がその男から、薬物入りのチョコレートをもらっていたのだ。

少女は数個を食べただけで、特に症状めいたものは見られないうえ、そのチョコレートを賢者に手渡したため心配はしなくてもよかったが、どこで小さな被害が出ているかわからない。

子供を利用し、徐々に大人にゆっくりと被害を広めていく卑怯なやり方に賢者は怒りを覚えた。

賢者はまだ唯一行っていない町、絶望に包まれたメルキドに向かった。

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