アリアハンから旅立って1日
船上
商人「オーブ?なにそれ?」
勇者「うん、なんかね。魔王を倒しにいくのに必要なアイテムみたいなんだよね。」
賢者「ええ、噂ではこの世界に6つ存在するらしいのです。」
僧侶「しかもそれぞれ色が違うらしいわね。」
武闘家「なんか面倒そうな話だよねー。」
商人「へぇ~、私は初耳だな。」
勇者達5人はアリアハンを旅立ち、船で北上していた。商人をスー東にある集落に送り届けるためだ。
グラグラ...
勇者「ん?なんだろ?」
ズズズズズ
ズゴォォォ
賢者「!?敵ですっ!」
僧侶「商人、下がっていて」
商人「うわぁ、おっきいイカ!」
武闘家「大王イカだよ!しかも3匹も!」
大王イカが3匹あらわれた
勇者「みんな!油断しちゃだめだよ。賢者と僧侶は魔法で!」
賢者・僧侶「了解!」
勇者「武闘家はバックアップね、海上では直接攻撃は危ない」
武闘家「わかった!商人、薬草と魔法の聖水準備よろしくね。」
商人「う、うん。わかった。(凄い、いざ戦いとなると4人とも別人ね)」
僧侶「まずは眠ってもらいます。深き眠りの底に落ちろっ!『ラリホー』」
僧侶はラリホーを唱えた。
大王イカAは眠りに落ちた
大王イカBは眠りに落ちた
大王イカCには効かなかった
賢者「よし眠らなかった奴に、燃えよ火球!『メラミ』」
大王イカCに直撃!
大王イカCをやっつけた
勇者「よし!私もいくよ。天なる轟きよ...」ブツブツ
僧侶「あっ!勇者それはダメ」
勇者「降り注げ雷よ!『ライデイーン』」
賢者「みっ、皆さん伏せてー!」ガバァ
武闘家「うわ!やばい!商人も伏せてー!」ガバァ
商人「きゃああ~!(眩しい!)」ガバァ
ピカァ!
キィィィン!
ズシャァァァ!
勇者はライデインを唱えた
天から雷が降り注ぐ
大王イカABに直撃
大王イカを消し去った
約2時間後
船上 船室
商人「...ん」
武闘家「あっ?起きた!」
商人「ん~?あれ?武闘家。私、どうしたんだろ?」
武闘家「大丈夫?あなたは気絶して2時間くらい寝てたんだよ。」
商人「気絶?なんで?」
先ほどの戦闘で、勇者の放った雷の魔法ライデインが、海上だったために敵だけでなく船上にいた皆にも感電被害を及ぼしたのだった。レベルの低い商人はダメージをモロに喰らったのだ。
ガチャ
勇者「あっ!商人起きたんだ?」
武闘家「あっ!じゃないでしょ~。まったく。商人に謝りなさい。」
勇者「ご、ごめんなさい!久々の戦闘だったからつい。商人にもいいところ見せようと思って、海の上ってことも忘れて雷の魔法を...」
商人「ああ、そうだったんだ。私は突然目の前が明るくなって目が眩んだと思ったら、そのまま」
武闘家「私だって、いきなりだったから驚いたよー。感電したし、痛かったんだから。」
勇者「あ、あはは。……本当にごめんなさい」シュン
商人「いいよ。そんなに謝らないで。気にしてないし。それに...」
武闘家「それに、なに?」
商人「みんな凄い強いんだな~って。いつもはあんなに女の子なのに、戦うとなると皆キリッとしてかっこよかったもん」
勇者「え?えへへ。かっこよかった?」ニカッ
武闘家「はい、調子に乗らない。(へへ、誉められちゃったなぁ)」ヘラヘラ
商人「あなたもね。」ジロ
商人「(みんなだって頑張ってるんだ。私も絶対頑張って町を作るんだ。)」
ガチャ
賢者「あ、商人さん起きたんですね。よかった~!心配しましたよ。」
僧侶「晩御飯ができたわよ。みんな食べましょう!」
2日後
船上
勇者達を乗せた船は順調に進み、あと1時間ほどでスー東の集落に着くというところまで来ていた。
賢者「いよいよですね、商人さん。」
商人「うん、もう私は準備万端だよ。ちょっとドキドキするけど。」
僧侶「なんか数日だったのにあなたがいなくなると思うと寂しいわ」
勇者「そうだよね。商人には世界地図を作ってもらったり、買い物の時にうまく値切るノウハウを教わったりしたもんね」
商人「買い物の時に役立ってもらえば幸いです。」ニコッ
武闘家「商人、ありがとね。」
商人「ううん。こちらこそ。(いつもの武闘家らしくないな)」
スー大陸 スー東の集落
船は集落の見える海岸沿いに停まった。5人は陸に降り立ち。集落に向かって歩いていく。
しばらく歩いていくと、草原の中に建つ、一軒の小さな家が見えてきた。
勇者「あ、あれだよ。あの家におじいさんが住んでるんだ。」
商人「へぇ。小さいけどきれいな家ね。見た目よりしっかりした作りがされてるなぁ。」
僧侶「じゃあ早速入ってみましょうよ?」
賢者「そうね。おじいさん元気にされてるかしら。」
勇者は玄関のドアをノックした
コンコンッ
勇者「こんにちは~!勇者です。おじいさんいますか~?」
老人「ん?勇者か?よく来てくれた。今開ける待ってくれ」
ガチャ
勇者「おじいさん!元気だった?」
賢者「こんにちは。お久しぶりです。」
老人「おお、久しぶり。よく来てくれた。歓迎する」
武闘家「おじいちゃん!寂しくなかったー?武闘家が来たよ~」
僧侶「お元気そうでなによりね。」ペコリ
老人「皆も元気そう。ワシも嬉しい。とても寂しかった。」
商人「あ、こ、こんにちは。初めまして。」
老人「おや?この子前いなかった。.....もしや?」
商人「あ、あの商人と申します!おじいさんと一緒に町作りをするために来ました。」
老人「おお!この子武闘家が言ってた商人か。」
武闘家「そう!若いけどすごい優秀な商才があるんだよ。」
老人「それ助かる。やっとワシの長年の夢叶う。」
商人「はい!私も町作りをしたくていろいろ勉強をしてきました。おじいさんを立派に手伝っていきます。」
老人「ありがたい。………ただ。いいのか?皆と別れ、故郷に家族いるだろうに。」
老人「ワシのわがままで、まだあなたみたいな若者を。」
商人「はい、たしかに寂しさはあります。でも私は自分がどこまでやれるか、町を自分の手で作れるのか。やりたくて自分の意思でここに来ました。」
老人「………」
商人「だから、おじいさん。町作りを私に手伝わせてください!よろしくお願いします。」
老人「その目に秘めた強い意思、わかった。あなたに手伝ってもらいたい。よいかな勇者?」
勇者「商人の強い意思だよ。大丈夫。私達は私達で魔王を倒すっていう目的があるからね。」
老人「ではこれからよろしく頼む!」グッ
商人「はい、こちらこそ!」グッ
商人は老人と固い握手を交わした。
夜 集落の空き家内
商人は早速、老人とこれからの町作り計画を練ることになり、老人の家で話し合いをしていた。勇者達は今日は別に経ってある空き家に泊まり、明日の早朝に旅立つことになった。
ガチャ
商人「ふうー。みんなごめんね。おじいさんと熱弁繰り広げちゃったよー」
「……………」
商人「あれ真っ暗?みんな?いないの?どこにいっ....」
パンッパンッ!
パチッ
全員「商人、お誕生日おめでとう~!!!」ジャーン
商人「!?」
商人「びっくりした~!心臓止まるかと思ったよ。」ドキドキ
武闘家「やったぜ!ドッキリだいせいこ~う!」
賢者「ふふ、うまくいきましたね。武闘家さん!」
商人「こ、これはどうしたの?」
勇者「武闘家の発案だよ。お誕生日を迎えた商人をお祝いしたいってね、へへ。」
僧侶「商人の新しい門出も祝いたかったし、じゃあお別れの前にパーッとやろうってね!」
商人「あ、ありがとう。私のためにこんなに...グスッ...うわぁぁん」ガバッ
商人は武闘家を抱き留めた。
商人「ありがとう。武闘家。」
武闘家「そんなに泣かれると、私も...グスッ...明日から頑張ってね、私も頑張るから。」
商人「うん。私頑張るよ。絶対素晴らしい町にしてみせるよ。」
僧侶「よしよし。じゃあみんなでケーキを食べましょう~!」
賢者「そうです、ほらほら二人とも一緒に。」
商人「え?この大きいケーキはどこから?」
勇者「私がスーの村に行って、村のお菓子屋さんに頼み込んで作ってもらったんだー。」
賢者「密かに商人さんの事を話したらおじいさんが気を利かせてくれたんですよ。」
商人「そうなんだ。(ありがとうおじいさん。)」
武闘家「よぉ~し。じゃあ、早くケーキを食べようよ!賢者、早く切り分けて~」
賢者「はいはいお待ちください。」
勇者「ねえ賢者、私はそのイチゴと板チョコがあるところね。」
武闘家「あ、ずるいぞ勇者。私がそこを食べるんだってば!」ドタバタ
商人「まったく~子供なんだから、武闘家は...」
僧侶「ふふふ、にぎやかで楽しいわね。」
商人「僧侶さん。」
僧侶「どうしたの?」
商人「武闘家の事、よろしくね。子供っぽいから。お姉さんお願いします。」
僧侶「ふふ、任されたわ。大丈夫。あなたは心配しないで町作りに勤しんでね。」
商人「うん。ありがとう。」
その夜は、5人(途中でおじいさんも合流し)で遅くまでどんちゃん騒ぎになり、楽しい時間を過ごした。
翌朝、早朝に商人とおじいさんに見送られながら勇者達は再び旅立っていった。
そして商人はおじいさんと共に長く辛い町作りをはじめることになったのだ。
商人は町作りを達成できるのだろうか。
スー東の集落 老人の家
勇者達4人が旅立って丸1日。
商人は老人と話合うために、老人の家に詰めていた。
これからこのなにもない集落をどうやって町に作り上げていくか、なにが必要か商人と老人は話し合っていた。
老人「うむ、まず一番最初にしなければならないことなにかのぉ?」
商人「そうですね、やはりこの土地を開墾して整備、が一番最初じゃないでしょうか?」
老人「そうじゃの。なにより先に人住めるようにしなければな。具体的にはどうやっていく?」
商人「はい。人を雇って、ここを開発していくのがいいと思います。資金にも限界がありますが...」
老人「おぬし資金はどれほどある?ワシはこれほどある」ドン
テーブルには老人が大事そうに大きな壺を置いた。中にはかなりのゴールド(以下G)が入っているようだ。
商人「す、すごい!こんなにGが。おじいさん、これは?」
老人「これワシが若い頃から働いてきてコツコツ貯めたG。今この時のために使いたい。商人、使ってくれ。」
商人「(おじいさん、本気なんだ。すごい。)」
商人「わ、わかりました!おじいさんの今までの頑張り、受け取りました。有効に使わせていただきます!」
老人の意気を感じた商人は、自分の用意してきた資金を出した。
老人「おぬしもけっこう持ってきたな」
商人「はい。このケースに入っているのは私の故郷のお店で貯めた分。そしてこの封筒に入っているのは勇者達が私のために冒険資金から出してくれた分なんです」
老人「そうか、それすごい。これである程度までは進められるか?」
商人「おそらくは大丈夫だと。なにぶんおじいさんの用意してくれた分が頼もしいです。」
老人「ほっほっ。ではいよいよ夢への第一歩じゃな。ワシにできることなんでも言っていい。スーにもワシに協力してくれる大工が何人かいる。」
商人「わかりました。じゃあ早速………」
老人の申し出を受け、商人は早速町作りの第一歩を踏み出した。
まずこの集落近くのスー村に老人の口添えで大工を要請した。必要最低限の家屋を建てるためだ。
故郷アリアハンにも安く仕事をしてくれる馴染みのよろず屋や庭師を手配した。これは土地の開墾や整備をしてもらうため。
そして商人自身は、まずは自分の住む家を作り、そこで自分の店を作ることにした。