ホープバーク 宿屋
ガチャ!
商人「はあ、はあ。遅くなっちゃってごめんなさい!」
青年「ああ、商人さんお疲れさま。来てくれてありがとう。」
商人「今日はなにをすればいいですか?」
青年「ええとね~じゃあ各部屋のお掃除を頼むかな。僕も一緒にやるから。」
商人「わかりました!じゃあ私、着替えてきますね。」タッタッタ
青年「うん、じゃあ僕は先に始めてるね。」ニコ
ホープバーク 宿屋 客室
商人「ええと、こことここかな、汚れがまだ残ってる。」キュッキュッ
青年「商人さんは手際がいいな。僕は掃除ってのはどうも苦手で。いつもはお手伝いさんがいるんだけど、今日は風邪引いちゃったみたいでね。」
商人「そんな~、普通ですよ。私は料理は好きだけど掃除は苦手な方です。」ニコ
青年「へぇ。商人さん、料理得意なんですか?」
商人「いつかな、勇者達4人にも振る舞いましたよ!大絶賛でしたよ、えへ。」
青年「いいなぁ。僕も商人さんの手料理食べたいな~、なんて。ははは。」チラッ
商人「へ?そんなんでよければいつでも言ってください。作りに来ますよ!」
青年「えっ?ほ、ほんとに。」
商人「はい、青年さんには感謝しきれないくらいなんだから。そのくらいのお返しはさせてもらわないとね。」
青年「(はぁ~そういう意味でか...)」ガクッ
商人「? あっ、青年さん!水溢れてるよー!」
青年「へ?うわっあ!」
バシャー!
青年「やっちゃったなぁ...」
商人「あはは、気を落とさないで。またやり直せばいいんだから、ほらほら。」せっせせっせ
青年「ありがとう(やっぱり商人さん可愛いな...)」
ホープバーク 宿屋 ロビー
青年「商人さん、今日はありがとう。助かったよ!はい、これどうぞ。」
商人「力になれて私も嬉しいです。わあ、ジュースですか、ありがとう。いただきますー。」ゴクゴク
青年「そうだ、商人さん。少し相談があるんだけど、」
商人「いいですよ、どうしたんですか?」
青年「実はおじいさんから、この町の町長にならないか。と言われているんですが。」
商人「!?」ゴクゴク
商人「青年さんが?町長に?」
青年「はい。お前ならしっかりとやれる。大丈夫だ!と。どうですか?」
商人「いいじゃないですか!まさに青年さんなら新しい町長にピッタリだよ!」
青年「そうかなぁ。あまり自信がないんだけどな。」
商人「ううん、適任だと思うな。青年さんは真面目だし、優しいし、町民とも仲がいいし。」
商人「なにより、町民の先頭に立って、みんなをまとめていたんでしょ。町のみんなも大賛成だと思いますよ。」
青年「商人さんにそう言ってもらえると自信が出てきますよ。なにしろ初代町長で一から町を作った人だし。」
商人「ううん、私なんか。途中で失敗しちゃってるんだからだめ。私も青年さんが町長になったらすっごく嬉しいもの!」ニコ
青年「よかった、商人さんに聞いてみて。自分でもじっくり考えてみるよ。」
青年「(よし、なんかやれそうな気がしてきたぞ。)」
商人「あ、じゃあ私はそろそろ帰りますね!ジュースごちそうさま~!営業頑張ってたくださいね!」
青年「はい。またいつでも来てくださいね。お疲れさまでしたー!」
ガチャ
バタン
ホープバーク 老人の小屋
コンコン
ガチャ
商人「こんばんはー。おじいちゃんいる?」
老人「おう、商人か。どうしたもう夜だぞ。」
商人「ううん、なんとなくおじいちゃんの顔が見たくてね。あれ?夕御飯は食べたの?」
老人「今からじゃ、なにか適当に作ろうかと思っとった。」
商人「そっか。……ねえ、私も夕御飯今からなんだけど私が作ろうか?」
老人「お前が?そういえば料理得意と言ってたな。」
商人「うん!じゃあ決まりね!」
食事後
商人「ごちそうさまでした~!」
老人「ふむう、みんな絶品だったわい。馳走になったな。ありがとう商人。」
商人「うふふふ、どういたしまして。全部食べてくれてありがとね。」
老人「おぬしは、故郷に父親がいるんだったな。この前の手紙もあったが。」
商人「そうだよ。パン屋兼道具屋をやってるんだ。」
老人「母親は、おらんのか?」
商人「うん、まだ私が子供の頃に流行り病で死んじゃった。だから料理は私の役目だから得意になったんだよ。」
老人「そうだったか...」
商人「そういえば、おじいちゃんはスーに家族はいないの?」
老人「ワシは今の今までずっと独り。遠い親戚に商人より上くらいの男の子いるが、行方知れずなんじゃよ」
商人「そうなのね...寂しくないの?」
老人「何十年も独りだったからな。もう慣れたよ。それにの、今はお前が孫みたいなものだと思ってるから、寂しくないわい。」
商人「え?孫?わ、私が?」
老人「ワシにもし孫がおればお前みたいなかわいいおなごなんだろうのう、ほっほっ。」
商人「か、かわいいだなんて。照れるよ、おじいちゃん。」カァ
老人「ほっほっ、なに照れてる?お前らしくない。」
商人「んー。でもありがとう。でも私もおじいちゃんっていなかったから、ほんとのおじいちゃんみたいに思うよ、えへへ。」
老人「そうかそうか、嬉しいのう。」ポロ
商人「(おじいちゃん泣いてる?)」
老人「お前が、町長になって牢屋に入れられるまで、ずっとヒヤヒヤしとったぞ。心配させおって....」ポロポロ
商人「あ、………本当にごめんなさい。おじいちゃんは私の事をずっと心配してくれてたのに、気が付かないで。」
商人「ううん、気が付いていたはずなのに、目先の事ばかりにとらわれてて気が付かないフリをしてたのね。」
老人「ズズ..でも....いい。もう過ぎたこと。今こうしてお前と話ができるだけで満足だよ。」
商人「おじいちゃん。肩叩きしてあげるよ!」
老人「ん?そうか。ではお言葉に甘えようかの。」
商人「はいはい、じゃあ失礼しますよ~。」
とんとんとん
とんとんとん
とんとんとん
………………
商人の一日が終わった。
それから2週間後
世界中に嬉しいニュースが駆け巡った。
勇者達一行が、ネグロゴンドの奥にある城にて、魔王バラモスを倒したという。ついに世界に平和が訪れることになった。
それとまったく時を同じくして、商人の町ホープバークでも新しいなにかが始まろうとしていたのだ。
ホープバーク 入口
勇者「いや~やっと着いたね!船旅はのどかでいいや。」
僧侶「………んぐ」ジロ
勇者「あ、ごめんね僧侶。」
賢者「魔王を倒しても、船には弱いよね、大丈夫?」
武闘家「商人は元気にしてるかな~?早く行ってみよー。」
僧侶「それもだけど、ど、どこかで少し休ませて...」グタッ
勇者「よし。じゃあとりあえず宿屋に行こうか。」
ホープバーク 宿屋
賢者「着きましたね。あれっ?」
武闘家「賢者、どうしたの~?」
賢者「ドアに張り紙が....『本日休業いたします。ご用の方は町長の家においでください』ですって。」
勇者「お休みなんだー。じゃ仕方ないね。僧侶大丈夫?」
僧侶「ええ、だいぶマシになってきたから大丈夫よ。」
武闘家「なら、とりあえず町長さんの家に行ってみよか。」
賢者「そうですね。」テクテク
ホープバーク 町長の家
商人「では、青年さん。あなたを今日付けでホープバークの新しい町長に任命します。」
青年「はい!一生懸命頑張らせていただきます。」
老人「うむ。お前なら立派な町長なれる。ワシが保証する!」
商人「青年さん、頑張ってね!この町をもっと良くしていってね。」
ガチャ
勇者「失礼しまーす。ってあれ?商人だ~!」
商人「えっ?勇者じゃない?どうしてここに。」
勇者「アリアハンに戻って、王様に世界中の皆に直接知らせてきなさいって言われてね」
賢者「こんにちは!みなさん、お元気ですか?」
僧侶「あら、みんな揃ってるのね。」
武闘家「我ら魔王バラモスをやっつけた勇者ご一行だぞ~!」ドヤッ
商人「みんな!無事だったのね?よかった~、魔王討伐お疲れさま!」
青年「みなさん!お帰りなさい。わざわざ来ていただいて、町長としてお礼申し上げます。」ペコリ
勇者「え。町長って、青年さんが町長さんになったんですか?」
老人「そうじゃよ。今日からまたこのホープバーク新しく始まる。とても嬉しいこと。」
武闘家「町長さんか~青年くん、凄いね!カッコイイ~!」ピーピー
賢者「この度は就任おめでとうございます。頑張ってくださいね!」
僧侶「そう。これからはおじいさんと商人が青年さんは支えていくのね。」
商人「あ、あの、そのことなんだけどね。実は...」
商人「私はもうこの町を出ようと思うんだ。」
青年「……………」
老人「……………」
武闘家「町を出る?」
賢者「ど、どうしてですか?」
僧侶「あなたはもう罪人ではないのよ。町のみんなからも許してもらって認められてるんでしょう?」
商人「うん。私もたくさん反省して、町のみんなのために働こうと一生懸命やってきた。だけど。」
勇者「…………」
商人「このホープバークという町には、立派な町長がいる。私の役割はすでに終わっているの。」
商人「1年にも満たない時間だったけど、たくさん勉強をさせてもらった町作りに感謝しています。」
武闘家「商人....いっぱい考えたんだね。えらいよ。」
商人「これからは青年さんとおじいちゃんとで素晴らしい町に発展させていってくれると信じてます。」
老人「お前がいなくなるのはあまりにも寂しいが、お前の決めた事、ワシは止めないよ。」
青年「僕も寂しいけどこれまで商人さんが必死に作ってくれたこの町をしっかり受け継いでいきます!」
商人「二人とも後はよろしくお願いね。勇者、私は一旦アリアハンに帰るね、そこで今後なにができるか考えてみるつもりよ。」
勇者「そっかぁ、よくわかったよ。私達もまだいくつか回らないといけない国や町があるから。」
賢者「じゃあ商人さんもひとまずお疲れさまですね。アリアハンでまた会いましょうね。」
僧侶「また、あなたのお店の美味しいパンが食べたいものね。」
商人「そうだね、また遊びにきてね。パンもサービスしちゃうよ。」
武闘家「おじさんとも久々に会えるね!いっぱい甘えてあげなよね、へへへ」
商人「私は子供じゃありませんよー。べー、だ。」プイ
商人「ねえ勇者。もし機会があればだけど、私をまた仲間にしてくれる?」
勇者「もちろん!大歓迎さ!」
商人「...ありがとう。」ニコッ
世界に平和が訪れた。そんな中、ホープバークていう町が新たな道を歩んでいくことになった。町作りに携わった商人は、新しい町長の誕生を見届けて自らは町を去った。
勇者達一行も各地を回り、魔王討伐と世界平和の実現を報告し、故郷アリアハンに戻っていった。
しかし、まだ目に見えぬ新たな闇が刻一刻と確実に迫っているのを誰も知らなかった。
中編 おわり
中編終了時における各キャラのレベル
勇者♀
Lv.40
武闘家♀
Lv.41
賢者(元僧侶)♀
Lv.37
僧侶(元魔法使い)♀
Lv.39
商人♀
Lv.7