女商人「やっと私の出番ね」ルイーダ「あ、登録しただけよ」女商人「えっ?」 15/21

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賢者がメルキドの町に着くとほぼ同時刻

マイラの町 温泉

戦士「きぃもちイイ~!生き返るわ~。」チャプ

戦士「こんなのいつぶりかしら?まだ勇者達と旅に出る前か。」

戦士「早いなぁ、もう少しでこの旅も終わる...」

戦士「(生きて帰れればだけど、ねぇ。)」ブクブクブク

戦士はふと自分の両腕を見た。

戦いでついたと思われる深目の傷が無数にあった。

戦士「(あ、こんなところに傷が。)」

戦士「はぁ~」

戦士「(戦士になってから体も強くなったけど、傷が増えたわね。仕方ないか。)」

戦士「(アリアハンに帰ったら、どうしようかな。それかレーベの師匠のところでまた働こうか。)」

女番頭「お客さま~。お湯加減はいかがですか~?」ヒョイ

戦士「きゃあ!びっくりした。女将さんか~(覗きかと思った)」ドキドキ

女番頭「ああ、ごめんなさいね。ついいつもの癖で。」

戦士「湯加減、ちょうどよくて最高ですよ。こんな温泉は滅多にないかな。」

女番頭「そうですか、よかった~。お客さまは今日はどちらから?」

戦士「あ....あの上の世界からなんです。」

女番頭「え?上の世界から?じゃあお客さまはもしや、勇者さま?」

戦士「え、ええまあ。私は勇者の仲間です。」

女番頭「ホントッ?きゃー!最近噂になってて凄いんですよ。」

戦士「私達がですか?(案外有名人なんだな私達。)」

女番頭「ええ、それはもう!このアレフガルドを救う『希望の勇者』って。」

戦士「希望の勇者...そんな噂が。」

戦士「(悪い気はしないけど、なんか恥ずかしいわよね。)」

女番頭「その勇者さまのお仲間さんがこの温泉に来てくれるなんて~。」

女番頭「よ~し、見てなさいよ。隣の温泉の年増女将め、このことを上手く利用して、

ここをもっと宣伝して.....」ブツブツ

戦士「(………商魂逞しいわね。賢者もたまにああなるし。)」

戦士は温泉をたっぷり満喫したあと、温泉宿の食事処で食事をこれまた満喫していた。

食事時というのもあり、食事処はけっこうな人で賑わっていた。

戦士が運ばれてきた食事を食べている時にふと近くの席から男達の話し声が聞こえてきた。

マイラの町 温泉宿食事処

男A「なあ、それよりも知ってるかよ?」

男B「あん?なんのこった?」

男A「町外れに住んでる男Cのさ様子がおかしいんだよ。」

男B「あいつの様子のおかしいは今に始まったこっちゃねーだろが。」

男A「いや、そういうことじゃなくてな、ラリってる感じで。」

男B「おい、それって。なにかヤバい薬でもやってんじゃ?」ヒソヒソ

男A「なんでも近所のガキにもらった食い物を食べはじめてかららしい。」

男B「ガキの食い物?ホントか。それか魔物かなんかが関わってたりするんじゃねぇのか。」

男A「ん。まああいつはゾーマがここを支配してから特にやる気

をなくしちまったというか、塞ぎ込んでたしなぁ。」

男B「だな。あ~あ、早く噂の勇者さまってのがゾーマを倒してくれないもんかね。」

男A「ムリに決まってんだろ?なんでも勇者以下、全員20にもいかない女の子だっていうぜ。」

男B「ああん?じゃあさすがにムリだよな、そんな色気もねぇようなお子様達にゃあよ。」

男A「ちげえねえ、はっはっはっ~!その辺で転んで『いったぁ~い』なんて言ってるのがオチだな。」

プッツン

ガタンッ!

戦士「あんた達、さっきから人が黙って聞いてると思って。」キラッ

男A「うわっ!なんだよいきなり!ヒィッ!」

戦士は右手に持った剣を男Aの喉元に突き付けた。

男B「なんだ?この女!やんのか、オラァ?」

戦士「やめたほうがいいわよ、私を怒らせたあんた達が悪い。」ブツブツ

戦士は左手を男Bに向けて広げ、何やら魔法を唱えようとしている。

男B「な、何の真似だ?そんなんで俺が怖じけずくとでも...」

ボッ!!

戦士の左手にメラミの炎が浮かんだ。

戦士「あんたの顔面をこの炎でめちゃくちゃにしてあげてもいいのよ。」

男B「ひっ!や、やめろぉ。いや、やめてください!」ガタガタ

戦士「撤回しなさい。」

男達「はい?」フルフル

戦士「私はバカにされてもいっこうに構わない。でも私の仲間をバカにするのは許さないわ。」

男達「は、はい。本当にずびまぜんでじた……」ポロポロ

戦士「わかってもらえて嬉しいわ」ニカッ

男達「ひいぃぃぃ~~!」ダダダッ

男達は一目散に逃げ去った

………シーン………

戦士「あっ!」

戦士「(やっちゃった!)」アセ

戦士「ご、ごめんなさーい。あの、ごちそうさまでした~!」ササッ

戦士も一目散に立ち去った。

マイラの町 町中の公園

戦士「はああ~、またやっちゃった。」ボソボソ

戦士「(よかった。今回は私だけで。)」

戦士「(でもあの男達が最初に言ってた話、気になるわね。)」

戦士「(こっちの世界でもそんなヤバいものが出回ってるなんてね。)」

戦士「(そういえば師匠が言ってたわね、『薬物は魔物の手によって精製する方が容易じゃ』)って。」

戦士「ま、いいか。とりあえずゾーマを倒してからよね。」

戦士「もう少し、町を散策してみようかしら。」テクテク

戦士は再び、町中に歩いていった。

こちらも賢者がメルキドの町に着くのとほぼ同時刻

ラダトームの城 図書館

武闘家「あの、新聞閲覧させていただいて助かりました。ありがとうございます。」ペコリ

司書「いえいえ。いろいろとこちらの世界のことはわかったかしら?」

武闘家「はい。アレフガルドもそれぞれの大陸でいろんなことが起きてるんですねー。」

司書「ラダトームも今の王様が王座に就く前はね、まったく違う家系の王様だったのよ。」

武闘家「え?あの王様は今の家系では初代なんですか。知らなかったなぁ。」フムフム

司書「ふふふ、あなたって好奇心旺盛なのね。」

武闘家「私は『知る』って凄いことだと思うんです。

本から得る知識って頭に染み込むから忘れないですし。」

司書「そうよね。私も本が好きだからこの仕事をしてるんだけどさ。日々発見があるわ。」

司書「ただ、以前はここも沢山の人で賑わっていたんだけど、すっかり今は...見ての通り。」

司書が言う通り、アレフガルド最大の規模を誇るこの図書館も今や人がほとんどいないのだ。

武闘家「………ゾーマのせいですね。私以外には数人がいるだけです。」

司書「そう。あいつのせいで、みんなの楽しみが奪われてしまった。」

武闘家「司書さん....」

司書「勉強をしにくる人、読書をしにくる人、寝にくる人、

のんびりしにくる人、みんな来なくなった。」

武闘家「私も大好きな空間である図書館が、こんな景色なのは悲しいです。」

司書「だからあのゾーマが憎くてたまらない。武闘家さん、

押し付けちゃうのは心苦しいけどゾーマを絶対に倒してね。」

武闘家「まかせてください!明日、私達はゾーマの城に乗り込むつもりです。」

司書「そっか。死んじゃだめだよ。またあなたとここで話がしたいわ。」

武闘家「私もです!えへへ。」ニコッ

司書「じゃあ、私はちょっとお昼を食べてくるわね。」

武闘家「あ、私も外に行って食べてきますね。また後でお邪魔します。」ペコ

武闘家「(こっちの人は暗くてもお昼の時間がわかるんだな。慣れちゃったのかな闇に...)」

武闘家は人がいなくなった図書館を出て、町中に向かった。

ラダトームの町 宿屋の食堂

店員「いらっしゃーい。」

武闘家「1人分ランチお願いしま~す。」ビッ

店員「はい。ランチひとつねー。」

武闘家「(まだみんな帰ってないみたい。私だけか、少し寂しいなぁ。)」

武闘家「(勇者さまも賢者さまもどこに行ったかわからないし。戦士と温泉に行けばよかったかなぁ。)」

店員「は~い、お茶をどうぞ。」トン

武闘家「ありがとうございます。頂きます。」ズズ

武闘家「(あったかくて美味しい~!あ~やっぱり温泉にしとけば....ん?)」ジー

武闘家「(なんだろ、あれ?)」

武闘家がふと目をやった掲示板にずいぶん目立つ紙が貼ってあった。

目を凝らしても見えないので立ち上がって掲示板のところまで行こうとしたがちょうどランチが運ばれてきた。

店員「はい、お待たせしましたー。特製ランチです。」トン

武闘家「あ、すみません。ありがとう。」

武闘家「(食べ終わったら見に行ってみるかな。)」

武闘家「では。いただきま~す!」ペコ

ぱく

モグモグ

ぱくぱく

モグモグ

武闘家「(………イマイチ。賢者さまの食事がたまには食べたいなぁ。)」

ズズズズ

ごくっ

武闘家「(……スープも微妙ね。賢者さまの野菜スープ美味しかったな~)」

武闘家は心の中でも文句を言いながらランチを食した。

武闘家「(まあまあだったけど)ごちそうさまでした!」ペコ

武闘家は掲示板に近寄っていった。大きい掲示板に1枚だけ貼ってある紙をまじまじと見てみた。

《不審者の情報求む》

近頃、ここラダトームのみならずドムドーラなど各地で

商人を騙った不審者の目撃情報が寄せられています。

不審者の男は主に子供を狙い、話かけてはお菓子をあげる

という怪しい行動をしています。子供がいる親御さんは特に

注意を払ってください。

男の特徴は背丈は約180ほど

年齢は不明(20歳~40歳?)

頭に白いダーバンを巻き

いかにも商人という衣服を着て

いるが上から黒いロングコートを羽織っている。

顔は穏やかだが、絶えず口元に笑みを浮かべている

以上の特徴を持った男をもし見かけたらすぐに連絡を!

ラダトーム城 警備隊 まで

武闘家「なんなのこれ?」

店員「ああ~、それね。なんでもアレフガルドの各町に出没してるみたいなんだよな。」

武闘家「そうなんですか。このラダトームでも目撃されているんですか、この男。」

店員「みたいだね。ここに書いてあるように子供に話かけていたって話さ。」

武闘家「気味が悪いですね....」

店員「どこかで店を出すわけじゃなく、こんなことして。コイツ何考えてんだろねぇ。」

武闘家「(怪しいやつ………)」

店員「あんた達、勇者一行が取っ捕まえてくれよ。ゾーマ倒すついでにさ。」

武闘家「へっ?私達がですか?」パチクリ

店員「あんたらかなり強いだろ。俺、この前、たまたま町の外に

用事があって出た時にキメラの集団をバッタバッタと倒すあんたらを見たんだよ。」

武闘家「あ、私達が戦ってるの見たんですか?恥ずかしいな。」

店員「あんたも身なりは小さい武闘家だけど、キメラより早い動きで攻撃も凄かったからな。」

店員「と思ったら、いきなり炎の魔法とか使ってたからな。この子らならゾーマ倒してくれるかもって思ったわけよ。」

武闘家「(へぇ。私達って案外見られてるんだなぁ。)」

武闘家「じゃあ期待していてください。きっとゾーマを倒しますから。」

店員「おう、頼りにしてるぜ。」

ラダトームの町 宿屋 武闘家と戦士の部屋

武闘家「長かった旅ももう終わりか~。」ボソ

武闘家「大魔王ゾーマ...倒せるかな私達に。」

武闘家「(みんなの前じゃ強がってるけど、ホントは不安だらけだし。)」

武闘家「(でもここまで来たら、当たって砕けろ、かなぁ。)」

武闘家「(もしアリアハンに帰ったらどうしよう?)」

武闘家「(僧侶に再再々転職して教会に戻るか。)」

武闘家「(このままで旅人さんのお母さんがやってる武術道場で働かせてもらうのもいいかも。)」

武闘家「(そうだ!司書さんにも相談してみよっかな。さて図書館に戻ろう。)」ダッ

バタン

武闘家は再び図書館に遊びにいった。

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