メルキドの町
賢者「……………なにか町の雰囲気がおかしい。」キョロキョロ
賢者「(明らかにこの前に来た時と違う、この町全体を覆う重い気は。)」
よたよた
町の男「あ、あんた。町の外からきた人か?へへへへ」
賢者「はい。そうですが。あの、ここは城塞都市メルキドですよね?」
町の男「ん~そんなことはどうでもいいんだ。あんたアレ持ってないか?」
賢者「アレ?とは。(この人、目の焦点があってない!)」
町の男「だーかーら!なんつったかな、ちょこらーと?とかいう甘い菓子だよ。」
賢者「!?」
賢者「(まさかと思ったけど...この町がターゲットだったのね)」
町の男「姉ちゃん、早く出せって言ってんだろうがぁ~!」バッ
賢者「くっ!?」ブツブツ
賢者「(深き眠りの底に落ちろ)『ラリホー!』」フワァ
男が突然襲いかかってきた
賢者はラリホーを唱えた
男はその場で眠り込んだ
賢者「ふう~びっくりした。」
賢者「(まさか襲いかかってくるなんて、かなりな禁断症状が出ているみたい。)」
賢者「(この町はただでさえ、他の町よりずっと住民が絶望しているのに、そんな心のスキに入り込んでこんなことを。)」
賢者「(あの男、いるかもしれない。探してみよう。)」ブツブツ
賢者「光よ我の姿を消したまえ『レムオル』」パァー
賢者はレムオルを唱えた
賢者の姿が見えなくなった
賢者「(これで余計なことに巻き込まれずにすむぞ、よし行こう。)」テクテク
メルキドの町 王の間
メルキド王「おぬしか、この町の者達の心に付け入り怪しげな食べ物をバラ蒔いていたのは。」
商人風の男「怪しげな者とは心外ですなぁ、王様。私はただ、町の皆さんに喜んでいただければと思い、タダで商品を配っているだけですよ?ふふふ。」
王「タダで配っている?しかし今、町の者はその食べ物を欲している。それでも貴様はタダでと言えるか?」
商人風の男「くっくっく。さぁてどうするんでしょうねぇ。私もすべてサービスしてしまっては商売にならないのでねぇ。」
王「いたずらに人々の心を操作してなにが楽しいのじゃ?ただでさえこの世界は今、ゾーマの恐怖によって支配されているのじゃぞ。」
商人風の男「すべては金のため、自分のため、他はどうなってもかまわない。くっくっく。」
王「ぐっ、なんて輩じゃ。して貴様の目的はなんなのだ?」
商人風の男「私はこの町を拠点にアレフガルド全土で商売がしたいのですよ。すでにこの町は私の意のままです。」
王「商売じゃと?貴様も人間だろう、ゾーマの恐ろしさがわからんのか?貴様も魔物に殺されかねんのだぞ。」
商人風の男「ふふふ、私はそんな者は怖くはありませんよ。私が殺されるなどということはありませんね、くっくっく。」
王「貴様は一体、まさか....?魔物と手を。」
商人風の男「くだらないおしゃべりはそこまでに願いましょうか。王様。」
商人風の男「私は今まで人を騙して騙して生きてきました。その度に、騙す者が強者、騙される者が弱者だと信じてきた。」
商人風の男「私はずっと強者のまま生きるのです。だから王様、あなたはそれを邪魔するのならここで消えてもらいます。」ジャキ
王「な、なにを。」
商人風の男「この町は私のものです。だからすみません、死んでください王様。」ギリギリ
バシュ!
バシュ!
バシュ!
男は構えたクロスボウをメルキド王に向けて発射した。
放たれた矢が王に向かって飛んでいく。
「氷よ!壁となれ!『ヒャダルコッ!』」
パキパキパキッ!
ピッキーン!!
ドスッ ドスッ ドスッ
王の目の前に突然分厚い氷の壁が出来上がった。放たれた矢は3本ともに氷の壁に刺さった。
商人風の男「な、なにぃ!?一体何が起きたぁ!?」キョロキョロ
賢者「お久しぶりね!商人さんっ!」バンッ!
商人風の男「久しぶり、だと?一体あなたは…」
男の問いかけを無視して賢者は王に駆け寄った。
タッタッタッ
賢者「王様!大丈夫でしたか?お怪我は?」
王「た、助かったわい…そなたはたしか。勇者どのの、お仲間の方。」
賢者「はい。その男を探していたところ、このメルキドの異様な雰囲気が気になって。」
商人風の男「一体あなたは誰だと聞いているのです!」
賢者「私は商人の町ホープバークの初代町長をしていた商人です。」
商人風の男「ホープバーク?というと、ああ、あの老人と若い女商人とが一緒に立ち上げた...
その赤い髪。覚えてますよ。あのお嬢さんでしたか。くっくっく。」
賢者「そう。あなたにまんまと騙されちゃったけどね。」
商人風の男「そのあなたがなぜ今こんなところに?町を追放でもされましたかねぇ。」
賢者「たしかに、私はその後クーデターを起こされて投獄された。でも追放なんてされていない。」
商人風の男「ほう。それは幸いでしたね。ただそのクーデターもね私が仕組んだんですよ。」
賢者「な?なんですって!?(あれは仕組まれていたの?)」
商人風の男「私が金で雇った男達でねぇ。巧みにあの町に潜入させてたというわけですよ。くっくっく。」
賢者「……ふう。……まああの時のことは今はいいの。騙された私も悪かったしね。
ただあなたが今やっていることは許せない!」
商人風の男「許せない?ふ、まあそうでしょうな。ただこれが私の唯一の正義なのですよ!」
賢者「このアレフガルドに来て、ある町であなたの噂を聞いた。
賢者になっても商人だったあの時のことだけは頭から消すことはできなかった。」
商人風の男「ワケあって今はあの勇者さまご一行というわけですか。ご立派に賢者さまになられて。」
賢者「ふざけないで。ドムドーラの女の子に言葉巧みにあんな危ないチョコを食べさせるなんて。」
商人風の男「!?なに。あのチョコの秘密を知っているのか?」キッ
賢者「詳しくはわからないけど、魔法で危険なものかどうかだけは判断がつく。賢者をナメないことね。」
賢者「あの中には毒か薬物が入っているんでしょ?しかもゆっくり効くようにごく微量に。」
商人風の男「チッ!まさかこいつに気が付く野郎がいたとはな。ああ、そうさ!最初はなんともないが
何個も食べれば知らずのうちに禁断症状が出てくる。そうなれば俺の思うツボさ。」
賢者「この町の皆の大半に禁断症状が出てる。この絶望の町メルキドをターゲットにしたのね?」
商人風の男「そこまでお見通しとはね。この町の人間は強い絶望感に苛まれてる。
そこに付け入り、甘い話をもちかけてやれば軽くコロっとさ、くっくっく。」
賢者「王様。この世界では犯罪者は捕まるとどうなるのですか?」ヒソヒソ
王「うむ。ラダトーム城内の牢獄に入れられるのが通例じゃが……」ヒソヒソ
商人風の男「なにをヒソヒソ話をしている?まさか俺を捕まえようなんて考えてるのかい?」
賢者「ええ。そのまさかよ。あなたを拘束します!」サッ
商人風の男「拘束だと?ふざけるなぁ!!」バッ
賢者「(あれは?爆弾石?)」
商人風の男「貴様らまとめてぶっ飛ばしてやるわ、食らえ!!」ビュン
王「ひいぃぃぃ~~!!」
賢者「王様!伏せてっ!!(間に合うか!)」ブツブツ
賢者「聖なる光よ、我らを包め『フバーハ!』」パアァァー
男が投げた3つの爆弾石が賢者と王の目の前に転がり、直後爆発を起こした。
ドッゴーーーーン!!!
ズドーーーーーーン!!
パラパラ カラン.....
王「く、むうう。ワシはぶ、無事なのか?」キョロキョロ
賢者「……………」
王「け!賢者どの!?大丈夫か?」
賢者「んん...くう。お、王様はご無事ですか?」ハァハァ
王「ワシは大丈夫じゃ、賢者どのが庇ってくださったのでな。それより賢者どのが....」
賢者「私もなんとか大丈夫です...フバーハのおかげで致命傷は避けましたから。」ブツブツ
賢者「我らの傷を癒せ『ベホマラー』」パァ
賢者はベホマラーを唱えた
王と賢者の傷が治ってゆく
王「お。おおお、傷が治ってゆく。」
賢者「けっこう危なかったなぁ。それよりもあいつはどこに?逃げたの?」キョロキョロ
メルキドの町 郊外
商人風の男「はぁはぁ。俺まで巻き込まれるところだった……」
商人風の男「だけどあいつら、爆発をモロに食らったな。ありゃあ死んだな、へへへ。」
商人風の男「(一度どこかに隠れてほとぼりが冷めるまでは大人しくしているか。)」
賢者「待ちなさい!あなたは逃げられない!」
商人風の男「なっ!貴様!あの爆発をモロに食らって生きてるだと?」
賢者「不意打ちで危なかったけどね。死ぬかと思ったよ。」
商人風の男「普通の人間である俺じゃああんたにゃ敵わないようだな。」
賢者「もう無理だよ。観念しなさい!」キッ
商人風の男「人間ならなあぁ!」ピィーーーー!「来い!魔物たちよっ!!」
男は口笛を吹いた。
遠くより魔物が大量に押し寄せた。
賢者「なんですって!?あなたまさか、魔物と手を組んだっていうの?」
商人風の男「その通り!俺は魔物と契約したのだ。はっはっは!」
商人風の男「大魔王ゾーマの城で待っているぞ。そいつらを全部倒せたらの話だがなぁ!」
男はドラゴンの背に乗り、立ち去っていった。
賢者「ま、待てぇ!(数が多すぎる!いくらなんでもこの数は…)」
魔王の影ABCDEがあらわれた
マクロベータABCDEがあらわれた
メイジキメラABCがあらわれた
ラゴンヌABCDがあらわれた
サタンパピーABCDがあらわれた
マドハンドABCDEFGHIJKがあらわれた
ヒドラABCがあらわれた
賢者「ただ、逃げることもできないみたいね。やってやる!」ブツブツ
賢者「炎の精霊よ!猛り狂え!『ベギラゴーン!!!』」
賢者「風の精霊よ!刃となりて切り裂け!『バギクローース!!!』」
賢者はベギラゴンとバギクロスを唱えた。
炎が風に乗り勢いが何倍にもなり魔物達を襲う。
ドゴオォォォォ~~~~!!!
ビュオォォォ~~~~!!!
魔王の影ABを焼き尽くした
マクロベータADEを焼き尽くした
メイジキメラABCを焼き尽くした
ラゴンヌADを焼き尽くした
サタンパピーCDを焼き尽くした
マドハンドABCDEを焼き尽くした
ヒドラCを焼き尽くした
賢者「はぁはぁ。戦士と武闘家に教わった合体呪文はスゴイわね。でも.....」
賢者「も、う魔力が尽き、ちゃった、みたい…(ここまでかな私。)」バタッ
賢者はその場に倒れこんだ。
残った魔物達がじわりじわりと賢者に近づく
賢者が動かないのを確認すると魔物達は一気に賢者に襲い掛かった
その時、勇敢なる詠唱の叫び声が響いた
「天なる轟よー!裁きの雷となり降り注げーっ!!」
『ギ ガ デイィーーーーーン!!!』ピカァ!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴォ!!
ドッシャアァァァァーーー!!
バチバチバチ!!!
シュウゥゥゥ~~~
魔物達全頭が豪雷により一瞬で焼け死んだ。
勇者「賢者!大丈夫?ダメだよ無理しちゃあ~~」ペシペシ
賢者「………ん。ううん。………」スゥ
勇者「(よかった。ただ魔力の使いすぎと体力の消耗が激しいだけだね。)」
勇者「とりあえず。ラダトームに戻らなきゃね。」ブツブツ
勇者「天よ繋がれ!『ルーラ!』」
勇者は賢者を背負い、ルーラを唱えた