ランシールの村 入り口
勇者「うわぁ~のどかな村だね~」
賢者(元僧侶)「そうですね。小さい村だけど、なんていうかいい雰囲気。」
武闘家「ねぇ、勇者。船旅長かったから今日はここで泊まろうよ~」
僧侶(元魔法使い)「勇者、私もそうしたいな、なんか気持ち悪くて...酔ったみたい。うう」
勇者「僧侶大丈夫?…そうだね。武闘家、彼女を連れて先に宿屋に行っていて。私は賢者と買い物に行ってくるから。」
武闘家「買い物?ああ、なにか珍しいものが売ってればいいね。頼むね~。さて、僧侶行くよ。」
僧侶「あ、あんまり早く歩かないで...ううう」
ランシールの村 宿屋
宿屋の旦那「はい。じゃあ4人部屋ね。突き当たって右の部屋だからね、ごゆっくり~」
武闘家「おじさんありがとう!さて、僧侶は部屋で休んでいて。」
僧侶「...あなたはどうするの?」
武闘家「暇だしちょっと散歩してくるよ。」
ランシールの村 宿屋 夜
勇者「ああ~夕飯美味しかったね。もう私食べれませーん!」
賢者「久しぶりにちゃんと宿屋の食事でしたもんね!」
武闘家「私もご飯5杯も食べちゃったよー」
賢者「武闘家さんは食べすぎですっば。」(^_^;)
勇者「僧侶は大丈夫?寝て良くなった?」
僧侶「うん。たいぶ。みんなごめんなさい。」
武闘家「いいって~気にしない気にしない。えへへ」
勇者「あ、私今から手紙でも書こうかなって思ってるんだけど。みんなそれぞれ自由時間ね。」
賢者「はーい」
武闘家「了解~」
僧侶「私はまだ寝てるね」
宿屋 ロビー
武闘家「あ、賢者こんなところにいた~」
賢者「武闘家さん?どうしたんですか?」
武闘家「勇者は真剣に手紙書いてるからちょっかい出したら追い出されちゃったよ。僧侶は寝ちゃってたから暇だし、賢者とおしゃべりでもしようかな~ってね。」
賢者「ふふ、そうですか。いいですよ。私もここで新聞読み終わったところなので。」
武闘家「新聞読んでたんだ?すごいな。なにか気になる事でもあった?」
賢者「う~ん、サマンオサではさらに行政が悪化していて、国王様の独裁的政治がさらに加速してるとの事で、どうなってしまったのか気になりました。」
武闘家「へぇ~。…それってなんか王様が怪しいよね。例えば魔物とかが王様に成り代わってるとか、ね?」
賢者「へ?ま、まさか~?いくらなんでも、そんなこと。」
武闘家「いや、案外そうかもよ。だってさロマリアの王様なんか王位を譲ってやるぞ、とか言ってたじゃん?」
賢者「あれは武闘家さんが悪ノリしすぎです(笑)」
武闘家「商人がね、小さい頃からずっと賢者様に憧れててね。」
賢者「そうなのですか。私もまさか今こうして賢者になれているのがまだ実感が薄くて。」
武闘家「だから商人は、私の仲間が賢者様になったんだよ、って知ったら喜んでくれるだろうなっ、てね。」
賢者「ホントですか?じゃあ私頑張らなくちゃ、まだまだ覚えてない魔法たくさんあるから....」
武闘家「そうだよー頑張ってもらわないとね。賢者君には」
賢者「えへへ。はい、頑張ります。」テレ
武闘家「まあ~それにしても、悟りの書をゲットするには苦労したしね。私が」ドヤッ
賢者「あ、たしかにそうでした!まさかあの塔の細いロープをひょいひょい渡って行ったのは目を疑いました!」
武闘家「うむ、そうだねぇ。君ら3人が腰を抜かしてへたりこんでるのを横目にこの武闘家様が颯爽と渡ってったからね」
賢者「さすが武闘家さん!って感じでした。(まあ、かなりお猿さんみたいだったけど)」
アリアハン 城下町 商人の家
父「おーい!お前宛に手紙が届いたぞ。」
商人「はーい!今行くよ。(手紙?武闘家からだ~)」
父「ほらよ。たぶん武闘家ちゃんからだろ。開けてみな」
商人「ありがとう!」
ビリビリ
カサカサ
商人「(相変わらずの字間違いね、あの子...ふむふむ)」
商人「(黒胡椒ねぇ、そんな貴重なものだったんだね、知らなかったな。)」
商人「(へぇー消え去り草なんて貴重なものがねぇ。)」
商人「(エジンベアなんてだいぶ北の島国よね?最後の鍵?)」
商人「(あの子、まさか消え去り草でみんなに悪戯とかしてないよね...やりかねん)」
商人「(スーか、面白い名前ね。ふむふむ。)」
商人「(………えっ?)」
商人「(それってどういう?)」
ガタッ
バタバタッ
バン!
タッタッタッ
父「(あれ?あいつどうしたんだ?おとなしく手紙を読んでたと思ったら置いて出ていっちまいやがった...)」
父「どれどれ?手紙を盗み見る趣味はねぇが、一体なにが?許せ娘よ」
ガサガサ
《拝計 商人様
お元気ですか?手紙を書くのはちょっと久しぶりになるかな。
私たち勇者一行は、順調に旅を続けているよ。前回の手紙の続きから書くね。まずピラミッドに入って、軽く地獄を見ました。中は忍者屋敷か!ってくらいの仕掛け満載で、落とし穴、人喰い箱、魔法封じ、まんまと引っ掛
まあその後は、私の頭じゃよくわからなかったけど、ポルトガではなぜか黒胡椒なんかを欲しがるよくわからない王様のためにバハラタで手にいれたよ。なんでもすんごい貴重なんだってね?商人は知ってた?(ちなみにま
そうそう、あとビッグニュース!ダーマの神殿っていう転職ができる場所があるんだけど、そこで僧侶が賢者様に、魔法使いが僧侶に転職したんだ~。あなたは賢者様に憧れてたでしょ?凄いよね~。でも二人ともすごく頑
その後、エジンベアって国に行ったんだけど城の入口で兵士が通せんぼして入れてくれないんだよ、田舎ものは去れ!みたいにさ。頭に来たけど、どうしても無理だからあきらめて船で北に向かってたらね、たまたま着いた
あ、脱線しました。
と、まあここからが本題なんだ、よく聞いてね。あなたに関わる重要なことなんだよ。
最後の鍵を手にいれて、私達は川が入り組んだ土地にあるスーっていう村に行ったんだ。この村の人達の口調が独特でかわいいんだよね。「旅の人 よく来た あなたかわいい」とかカタコトでね。
そのスー村から東に少し離れた草原の一画にほんとに小さい集落があるんだけど。そこにいたスー出身のおじいさんが言ったんだ。「ここに新しく町を作りたい。だから知恵のある商人が1人貸して欲しい。わし手伝ってほ
私はすぐに商人のことを思い浮かべたな。たしかあなたはそういう事も興味があるって言ってたよね。もし良ければおじいさんのお手伝いをしてくれないかな?
ただアリアハンからは遠いし、ずっと家を空けることにもなっちゃうよね。おじさんも商人のことすごく大事に思ってるからこれを聞いたらなんて言うかな。よ~く考えてみてね。勇者、賢者、僧侶にもこのこと話したら賛
この手紙がそちらに着く数日後には私達は一度アリアハンに戻ることになりました。まあ一度休憩も兼ねてね。私も家に戻ってお母さんの顔見たいし。(ちなみにルーラで戻ると思うよ、勇者が覚えたから使いたくてウズウ
じゃあまたアリアハンに戻ったら会ってゆっくり話そうね。長くなっちゃってスマンね。おじさんにもよろしくね。
スーの村にて 》
父「ふうむ(…なるほどな。さてあの子はどうするのかね。)」
父「(それにしても消え去り草か、俺も欲しいなぁ~。)」
アリアハン 城下町外れの公園
商人「はあ~……」
商人「どうしよう」
商人「(新しい町を作るか..)」
商人「(まさか武闘家からの手紙が今の私の考えている事とが一致しちゃうなんて。)」
商人「(だけどせっかく城内販売も軌道に乗ってきたところだったしな)」
商人「(家のお店の事もあるし。お父さんは寂しがるだろうなぁ)」
商人「(だいいち、町を最初から作るなんて私ができるのかな?)」
商人「(長くアリアハンには帰ってこれないかもしれない)」
商人「…うーん、一人で悩んでてもしょうがない。飛び出て来ちゃったし、お父さん心配してるかな。戻ろうっと!」スタッ
タッタッタッ
アリアハン 城下町 商人の家
ガチャ
商人「ただいまー」
「………」
商人「あれ?誰もいない?(お父さんいないな。)」
商人「…ん?奥の部屋から声が聞こえる」ソー
商人「(あ、お母さんのお仏壇の前でお父さんなにブツブツ言ってんだろ)」
父「母さん、もしかしたら商人のやつ、アリアハンから出ていっちまうかもしれないんだ」
父「まあ、でもあいつの大きな夢だったみたいだしな。最近はさ、お城の王様に直談判までして城内でうちの店の移動販売してたんだ。」
父「今じゃだいぶ盛況らしくてな、あいつの商人としての才能は相当だぜ?俺と母さんの娘だもんなぁ、はっはっはっ!」
父「あいつが8つの時に母さんは病にかかっちまって死んじまったが、明後日にゃ18にもなるんだ。10年なんて早いもんだな。」
父「あの子は本当に素直に育ってくれたよ。口では生意気な事言ってるが、俺のことを本当に心配してくれてるんだ。」
父「あの優しさは母さんに似たんだなぁ。」
父「もし商人が今回の話を断ったりしたら、ガツンと言ってやるんだ。」
父「だから母さんも天国から俺達の娘のこと見守っててくれよな」
父「久々に好きでもねぇ酒なんて飲んじまって...ねむ....くなっち」zzz
商人「(あ~あ寝ちゃった、風邪引いちゃうよ。えと、半纏をよいしょと)」ふわっ
商人「(お父さん...ありがとう。私やるね!)」グッ
2日後
アリアハン 城下町 入口
…………キーン
ドサッドサッドサッドサッ
武闘家「っつ~!いてててっ」
僧侶「あ、足が、しびれて。うう~~」
賢者「いたぁ...ちゃ、着地失敗ですね~」
勇者「あいたた、ご、ごめんね。詠唱を少しミスったみたい。」
武闘家「勇者ったら、相変わらずおっちょこちょいなんだからー」
賢者「まあまあ、とりあえずルーラの役割としては果たせたし。ルーラは難しいですよ。」
僧侶「勇者、次からはルーラは私が専門でやるからね。」ジロ
勇者「はぁい...」しゅん
?「あっ!勇者様!武闘家!賢者さん!僧侶さん!」
タッタッタッ
武闘家「商人っ?!久しぶり~!元気だった?」
商人「うん。元気だったよ!」
数時間後
アリアハン 城下町 商人の家
ガチャ
勇者「ふう~。やっと終わったよ。王様の話がすっごく長いんだもん。」
賢者「勇者様お疲れさまですー」
僧侶「大変だったわねー、ほら勇者座って。」
勇者「ありがとっ。」
武闘家「先にいただいてます~」 ぱくぱく
商人「あ、勇者様おかえりなさい!お腹空いたでしょ?私がみんなの夕食作ったの。ささ遠慮しないで食べて食べて!」
勇者「うっわぁー豪勢。実はお腹ペコペコなんだよね、さっそく頂きますー!」
賢者「うん!このお肉、どうなってるの?すっごい柔らかい~」
武闘家「パクパク………」
僧侶「あ、ほんとだ。味付けも絶妙だし!商人さん、これどうやってるの?」
武闘家「むしゃむしゃ………」
商人「えへへ...企業秘密です」
武闘家「ぐい~ごくごく……」
勇者「え~教えてよ。お城のコックのより美味しいもん」
武闘家「ガツガツガツガツ!」
商人「あの?武闘家さん?」
武闘家「おかわりー!」
商人「…………はい」ガクッ
夕食後
武闘家「であのね、商人。この前の手紙のことなんだけど..」
商人「あ、うん。読んだよありがとね。相変わらず字間違ってるよ。」
武闘家「あ~はいはい。失礼しました。」ペコ
商人「次からは気を付けるように。」ビシッ
商人「...私やるよ」
武闘家「え?」
商人「おじいさんの町作りのお手伝い。私やりたい!」
武闘家「そっか...いいの?無理にじゃないんだよ」
商人「こんなチャンス、普通巡ってこないよ!私の今一番やりたいことなの」
武闘家「そっか。ありがとう。あなたならそう言ってくれると思ってた。あのおじいさん喜ぶぞ~えへへ」
商人「武闘家達だって魔王討伐っていうとんでもない責務があって戦ってるんだもんね。私もなにか誰かの役にたてればさ。」
武闘家「そうだ。おじさんは、なんて言ってた?反対しなかったの?」
商人「うん、お父さんはぜひやってみろ!って、店や城内販売のことはお父さんや他の従業員人が継いでくれるんだって。」
武闘家「へぇ~。おじさんも愛する一人娘が出て行っちゃうのに、案外あっさりだねぇ。」
商人「そうだね...(ま、そんなこともないみたいだけどねー)」
武闘家「ん?なに?」
商人「なーんでもないよ」
武闘家「よしわかった。じゃあ私も帰るね。勇者もお城、賢者と僧侶も今日は家に泊まるって言ってたからね。」
商人「お母さんにたくさん甘えてきなよ」
武闘家「私は子供じゃないよーだ」ベー
ガチャ
クルッ
武闘家「商人。18歳のお誕生日おめでとう!じゃあね、おやすみ!」
商人「(あ、覚えててくれたんだ?)...ありがとう」ジワッ
翌日
アリアハン 城下町 中央広場
賢者「おはようございます~。商人さん。」
僧侶「商人さんおはよう。昨夜は楽しかったわ、ありがとう。」
武闘家「おはよー!う~ん伸びー」ぐぅー
商人「おはようございます!こちらこそ、昨夜はわざわざありがとう。」
賢者「そうだ。つい今しがた武闘家さんから聞いたんだけど、商人さん、昨日がお誕生日だったんですね!おめでとうございます!」ぱちぱち
商人「え?ありがとう~!昨日で18歳になりました。」テレッ
僧侶「おめでとう。じゃあ商人さんは私の一つ下ね。」
商人「あ、じゃあ僧侶さんはお姉さんですね。よろしくです。」ニコッ
武闘家「いいな~、私はまだ17だからなぁ先越された感じだ~。あれ?たしか賢者も17だっけ?」
賢者「私はまだ16なんですよ、僧侶や商人さんからすればまだまだ子供ですね。」
商人「若いなぁ。じゃあ勇者様っていくつなの?」
僧侶「たしか...勇者はまだ15歳になったばかりだって言ってたわよ」
商人「ま、まだ15歳で勇者様に...(だったら私なんてたいしたことないわね、頑張らないとね)」
武闘家「それにしても勇者遅いね、遅刻だぞ~ニヤニヤ」
賢者「(あの顔、なにか企んでる...)お城に住んでる人はいろいろと大変なんですよ。」
僧侶「って言ってる間にほら、来たよ。」
タッタッタッ
勇者「はぁはぁ、み、みんな~おはよう~!遅くなってごめんね。」
武闘家「まぁーたどうせ、王様と姫様と話してたんでしょ。こいつめこいつめ。」グリグリグリ
勇者「あっ、いたたたた。武闘家ごめんなさい。」しゅん
商人「こらっ!武闘家ったら、しょうがないでしょ、勇者様は大事な用があったんだから。」
武闘家「うっ。...はい、ごめんなさい。調子に乗りました。」しゅん
賢者「(す、すごい。武闘家さんを一発で黙らせた!)」
武闘家「勇者、ごめんね。痛かった?反省...」
勇者「ううん、遅刻した私もいけなかったしね。それにしても武闘家を一発でおとなしくさせるなんてすごいねー」
商人「え、いや。それほどでも。(まあこんなこと昔からだけどね、あはは)」
勇者「商人さん、改めてよろしくお願いします。」
商人「うん、こちらこそ短い間だけどよろしくね勇者、でいいかな?私のことは商人でいいよ。」
勇者「いいよ、もう仲間だもんね!ありがとう。商人。」
僧侶「よし、じゃあみんな行きましょう!」
一同「「「おー!!」」」
………………
かくして彼女たちの旅は再びはじまった。
前編 おわり