僧侶「ひのきのぼう……?」 2/31

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勇者「やあっ!」

勇者の こうげき! ▼

商人「このおおおっ!」

商人の こうげき! ▼

賢者「そのグループはまとめて倒せますね」

賢者は ベギラマを となえた! ▼

魔物のむれに ダメージを あたえた! ▼

戦士「こいつで最後だ!」

戦士の こうげき! かいしんのいちげき! ▼

魔物を たおした! ▼

魔物のむれを やっつけた! ▼

勇者「ふう……」

戦士「今の戦いはなかなか質が良かったな」

商人「多めにゴールドを回収!」

賢者「勇者様、足から血が」

勇者「えっ? ああ、こんなのかすり傷だよ」

賢者「私にはまだまだ魔力に余裕があります。回復させてください」

勇者「そ、そう? じゃあお願い、僧侶――じゃなかった賢者さん!」

賢者「……」

戦士「勇者。僧侶のことは忘れろとは言わんが、早いうちに意識を切り替えろ」

戦士「最終的に魔王との戦いは、このパーティーで挑むことになるのだからな」

勇者「わ、分かってるよ。今のは、ちょっと」

勇者「賢者さんが、いつもの僧侶と同じことを言ってきたから、つい……」

賢者「いつも?」

商人「そうです、僧侶の奴は、戦闘が終わるたびにイチイチ他人のケガを見て回るのです」

商人「いやーしつこいもんですぞ。別にいいと断る頃には、すでに回復呪文を唱えておりまして」

戦士「うむ、あれは考えなしだった。魔力の使い方としては、えらく非効率に思えたものだ」

賢者「まぁ、毎回そんなことをやれば効率は悪いでしょうね」

勇者「……みんな僧侶のこと何にも知らないくせに……」ボソ

商人「それにしても、やはり賢者殿は相当な戦力になりますな!」

賢者「お褒め預かり光栄です」

戦士「お前は先の町で、長らく呪文の研究をしていたのだろう?」

戦士「若いということもあって、正直あまり戦闘には期待していなかったが、」

戦士「予想に反して立ち回りは様になっていた。どこで覚えた?」

賢者「私は魔道の修練のため、大陸中を巡りました。元々旅には慣れ親しんでおります」

賢者「空白期間こそありましたが、思ったより勘が鈍っていなかったので幸いでした」

賢者「すぐに皆様に息を合わせられるよう、精進いたします」

商人「何をおっしゃる、賢者殿はもうすっかりパーティーの一員ですぞ!」

戦士「うむ。賢者がパーティーの良き参謀となれば、以前よりも旅は安泰になることだろう」

勇者「……そんなの絶対分かんないもん……」

賢者「あ。勇者様、足元っ」

勇者「うわ。っとっと」

賢者「大丈夫ですか?」

勇者「う、うん平気。ありがと。…………ちぇっ……」

戦士「――そろそろ日も傾いてきたが、次の町まではあとどのくらいなのだ?」

賢者「あと一山、越えなければなりませんが……勇者様、いかがいたしましょう」

勇者「それなら頑張って歩こう。まだみんな余力はあるみたいだし」

商人「賢者殿のおかげで、前よりずっと好ペースで進んでおりますからな!」

賢者「それは何よりです」

戦士「お前はパーティーに加入したばかりだ。くれぐれも無理はするなよ」

賢者「ええ、ありがとうございます」

勇者「……ねえ賢者さん」

賢者「はい?」

勇者「賢者さんは、どうしてこのパーティーについていこうと思ったの?」

賢者「それは無論、この世に悪をもたらす元凶、魔王を征伐するためです」

賢者「魔王はいにしえより、選ばれた勇者の剣でのみ討ち果たされると言われています」

戦士「……」

賢者「ゆえに勇者様が先の町に立ち寄ると伺ってからは、元より同行させて頂くつもりでした」

賢者「もちろん希望通りにパーティーに参入できるとは思えませんでしたが――」

賢者「幸運にもそちらの商人様の紹介あって、人員交代の機会に恵まれた次第です」

商人「いや何の、腕利きの賢者がフリーだと聞いては、声をかけずにはいられませんとも!」

勇者「ボクには急な話だったけどね」

戦士「仲間になるかもしれん、という話は予め伝えておいたはずだが」

勇者「僧侶が抜けるなんて聞いてないよ」

戦士「まだ言っているのか。過ぎたことを引きずるな。あれは……」

戦士「あれは僧侶の意志だったのだ。お前も納得しただろう」

勇者「……まだ全部飲み込めたわけじゃないよ。一日経ったばかりだし」

商人「まあまあ、徐々に今のパーティーに慣れていけばいいじゃあありませんか!」

勇者「……でも……」

賢者「勇者様」

賢者「私の能力では、何かご不満でしょうか? すぐに改善いたします、何でも仰ってください」

勇者「えっ? い、いや、そういうわけじゃないよ。賢者さんはすごく頼りになると思う」

勇者「ほら、もう日が沈んじゃうよ、先を急ごっ」

――――――――――――――――――――

僧侶は 魔物のむれをたおした!

経験値と 120Gを てにいれた! ▼

僧侶「ふう」

僧侶「なんとか勝てた……」

僧侶「……」

僧侶(こっちも命がかかってるから、甘いことは言ってられないけど)

僧侶(このモンスターたちも、子供がいたり、生きるのに必死だったかもしれない)

僧侶(供養だけでもしていこう。僕一人しかいないし、誰にも迷惑かからないよね)

僧侶(――)

僧侶「よし、先を急ごう」

僧侶(次の村に着いたら、装備だけでも整えようかな。やっぱり手ぶらじゃきついや)

僧侶(わ、よく見ると服もドロだらけだ。新しい服も買っておこう)

僧侶(そうだ、好きなものが自分のお金で買えるんだ。一人旅も悪くないかなあ)

――

僧侶は にげだした!

僧侶「はぁ……はぁ……」

僧侶(今度はうまく逃げられた。しかも村の方向だ、ラッキーだね)

僧侶(あ。この坂、見覚えあるぞ。ここを越えたら――)

僧侶(見えた! 村だ。まだ結構歩かなきゃならないけど)

ポツ ポツ

僧侶「!」

僧侶「また雨!」

僧侶(うーん、雨宿りするには中途半端な距離だなぁ)

僧侶(よし、もう日も沈んで暗くなってるし、今日は頑張ってあそこの村まで行こう)

パタパタパタパタ ……ザー―――――― ……

僧侶(うわあ、雨足早いぞ。急がなくちゃ!)

ザー――――――

僧侶(歩きづらいなぁ。視界も悪いし)

僧侶(でも負けないぞ。なんてったって僕は勇者のパーティーにいたんだ)

僧侶(雨の中でも勇気を出して、胸を張って歩こう)

僧侶「ん……!」

魔物Aが あらわれた!

魔物Bが あらわれた!

僧侶(村まであと少しだ。こうなったら……)

僧侶は マヌーサを となえた!

魔物のむれは まぼろしに つつまれた! ▼

僧侶「今のうち!」

僧侶は にげだした!

しかし 足がもつれて すっ転んでしまった! ▼

僧侶「ぶぼ! いてて……」

魔物のむれに まわりこまれてしまった! ▼

――

ザー――――――

【東の村】

僧侶「はぁ……はぁ……あれ?」

僧侶(必死で逃げてたら、いつの間にか村に着いてた……)

僧侶(良かった。なんとか無事に、一人で戻って来れたぞ)

僧侶(村の人は……やっぱりみんな家の中だ。こんな天気だもんね)

僧侶(ええっと、まずは宿屋? ううん、こんなに汚れたカッコじゃ、会う人に失礼だね)

僧侶(まずはお店に行って着替えを買ってこよう。ついでに装備も整えられるし、一石二鳥だ)

僧侶(もうすっかり遅くなったし、雨も降ってるけど……開いてるかな?)

僧侶(確かこのカドを曲がって……左に行って……もひとつカドを折れたここ!)

【東の村>武具屋】

僧侶(よかった開いてる!)

僧侶「こんばんわ~」 キィ…

武具屋「いらっしゃ……ん? お前どこのガキだ?」

僧侶「僕は通りすがりの旅人です。お金はあります、服を下さいな」

武具屋「おい馬鹿野郎、濡れたカッコで入ってくるんじゃねえ! 外で水きってこい!」

僧侶「ごめんなさい」

武具屋「旅人ねぇ、そうは見えねぇがなあ。ま、金があるってんなら一応客だが」

僧侶(所持金は125ゴールド……この村の宿屋は確か一人20ゴールドだから……)

僧侶(10ゴールドのぬののふくと……かわのぼうし80ゴールドまで買える!)

僧侶「これとこれを下さい」

武具屋「90ゴールドだ。偽金じゃねえだろうな」

僧侶(へへ。奮発してぼうしまで買っちゃった。一人で買い物って楽しいな。あ、そうだ)

僧侶「武器も見せてくださいな」

武具屋「ああ? あといくら持ってんだ?」

僧侶「35ゴールドです」

武具屋「はっ、やっぱ金持ってねえのか。その額じゃこれとこれしか売れねえな」

僧侶(ふむふむ、30ゴールドのこんぼうと……あ!)

僧侶「これ下さい!」

僧侶は ぬののふくを 装備した!

かわのぼうしを 装備した!

ひのきのぼうを 装備した! ▼

僧侶「これでよし。ありがとうございました」

キィ…

武具屋(へへ、いまどきあんな『ひのきのぼう』買うバカがいるとはな)

武具屋(一緒に並べて正解だぜ、タダ同然で仕入れて5ゴールドの儲け!)

武具屋(頭の回んねえ奴だ、まさに『ひのきのぼう』に相応しいガキだったぜ。へへ……)

――

僧侶(ひのきのぼう、買っちゃった。戦士さんが僕のことを『ひのきのぼう』って言ってたけど)

僧侶(僕にはぴったりだ。このひのきのぼうは、まさしく運命の相棒なんちゃって)

僧侶(残りは30ゴールド。この村の宿代は一人20ゴールド)

僧侶(残り10ゴールドで薬草も買えちゃうぞ。大事に使おう)

僧侶(えっと宿屋はこっちか)

僧侶(新しい服が濡れないように気をつけなくちゃ……)

【東の村>宿屋】

僧侶「こんばんは~」

主人「いらっしゃいませ……おお、あなた様は勇者様ご一行の!」

僧侶「わあ、覚えてくれて、ありがとうございます。そうです、僧侶です」

主人「あなた方であればいつでも歓迎します! どうぞどうぞ」

僧侶「あのうすみません、今日は僕一人なんです」

主人「……はて? どういった事情が?」

僧侶「僕は先日、勇者のパーティーから外れたんです。今は故郷に帰るところなんです」

主人「ははあ……なるほど、そういうわけですか……」

僧侶「こちらの宿代は、一人20ゴールドですよね。一泊、泊めさせてもらえませんか」

主人(……うーむ。勇者様がいないのでは、愛想振りまいてもしょうがないな……いま忙しいし……)

主人「あーその……実は80ゴールドなんですよ」

僧侶「えっ? この間パーティーで泊まった時は、全員で80ゴールドでしたよね?」

主人「ええーそれが、『一泊』、80ゴールドだったわけでして」

僧侶「えっ、そうだったんですか」

僧侶「僕、いま30ゴールドしか手持ちがないんですけれど……」

主人「あー……、……では、残念ながら……はい……」

僧侶「他に泊まれるところは知りませんか?」

主人「いえいえ、あったとしても、競合店を紹介するような真似はできませんよ」

僧侶「そうですか……では、お邪魔しました」

主人「はい、ご予算に都合がつきましたら、是非とも当宿屋に」

主人(……ふう、なんとか追っ払えたか。それじゃ仕事仕事――)

――

僧侶(そっかぁ。一泊で80ゴールドだったんだ。他のところと違うんだ)

僧侶(困ったなあ。80ゴールドだったら、ちょうどこの『かわのぼうし』と同じ代金か)

僧侶(きっと贅沢したから、バチが当たっちゃったんだろうなぁ。反省)

僧侶(じゃあ、今晩どうしよう。やっぱり野宿しかないかな)

僧侶(そうだ! キメラのつばさがあれば、家までひとっとびだ! 道具屋に行ってみよう)

僧侶(確か取り扱ってなかったはずけど、もしかしたら新しく入荷してるかもしれない)

僧侶(30ゴールドで譲ってはくれないだろうけど……一応、ダメ元で訪ねてみよう)

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