勇者「……魔王の身体が消えた……」
戦士「……」
商人「や……やりましたな!」
商人「やった! ついに魔王を倒し……あ、アレ?」
商人「皆さん、浮かない顔でどうしました?」
勇者「……」
賢者「……まだこの城を覆っている術式は、解けていません」
商人「何ですと!?」
戦士「魔王があそこまで弱い筈がない。本命は別にいる」
勇者「うん。仕掛けが割れてしまえば、後は楽だったし」
賢者「ああ、勇者様は看破されたようですね」
賢者「あの魔王の周囲に浮かんでいた水晶が、『眼』そのものだったことに」
戦士「どういうことだ?」
賢者「そうですね。真の決戦への休憩がてら、簡単に種明かししましょう――」
商人「えっ!? 真の決戦!? えっ!? えっ?!」
賢者「商人殿へのラリホー、私への攻撃、自身へのベホイミ」
賢者「どれもタイミングが良すぎました。これは、こちらの動きが悟られている証拠です」
戦士「うむ。俺の攻撃も、まるで背中に目がついていたかのようにかわされ続けた……」
賢者「背中ではありません。入り口の真上です」
戦士「?」
賢者「突如現れたかに見えた、もう一つの赤い水晶のことです」
賢者「あえて喚起しませんでしたが、この【魔王の間】に最初から浮かんでいました」
賢者「入ってすぐの真上である、我々の完全な死角に」
戦士「あの赤い水晶が、魔王の眼だったということか?」
賢者「はい」
賢者「始め私は、魔王の周囲を浮かんでいた玉に、予知能力でもあると思っていましたが」
賢者「動きを見る限り、逐一水晶を覗き込んでいる様子はなかった」
賢者「しかし背後から攻撃を加えようとしても、容易くかわされる」
賢者「では『何』を見て、もしくは察知して我々の動きを探っていたのか」
賢者「仮説は多々ありましたが――答えは『別視点の我々』でした」
戦士「別視点の? 確かにそれなら合点がいくが……」
賢者「私は始めから確信を持っていたわけではありませんでしたが」
賢者「可能性がありそうなものから順に、一つずつ潰そうと思いました」
勇者「うん……いま思えば、最初に商人さんがアイテムを出そうとした時って」
商人「えっ、はいっ?」
賢者「そう、商人殿は一番後方にいました。あの玉の位置からであれば、丸見えです」
賢者「つまりあのラリホーは、商人殿を狙い撃ちしていたのです。それもヒントになりました」
商人「なんと。それでは眠らされても仕方がないですな」
戦士「それで……そのもう一つの水晶の方に向かって、マヒャドを唱えてみたという訳か」
賢者「ええ。呪文が効かないことを承知でマヒャドを選んだのは、仮説が正しかった場合――」
賢者「仕留めきれずとも、周囲を凍らせれば視界は曇るだろうと思いまして」
勇者「さすが賢者さん。おかげで一気にカタをつけることができたよ」
賢者「ありがとうございます……しかし……」
勇者「うん。分かってる」
勇者「本物の魔王が、あんな低級呪文や、小細工だけで終わるはずないもんね」
戦士「となると、さっきの魔王……いや魔物は、ただの側近か何かだったようだな」
商人「うう……では、本物の魔王は別にいると?」
勇者「うん、間違いないよ。まだ嫌な気配を感じる」
賢者「……皆さん、あれを」
勇者「! 玉座の奥に……階段が!」
戦士「ここは最上階ということは、登った先は……」
商人「屋上……ですかな」
賢者「はい。そして玉座の後ろにある物も、よくご覧下さい」
勇者「あれは……この城を貫いてる主柱? こんなところにまで伸びてるなんて……」
戦士「何が言いたいのだ?」
賢者「はい。前に申しましたように、あの柱は上へ向かっての魔力の脈動を感じます」
賢者「もしあれが屋上まで貫いているとすれば、その先には……」
勇者「……」
勇者「みんな、行こう」
勇者「決戦の舞台は、屋上だ――!」 ――
――――――――――――――――――――
【毒沼の道】
僧侶「ハァ……ハァ……」
僧侶(毒沼を歩くのはきついなぁ。体力が容赦なく減っていっちゃう)
僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の 体力が 回復した! ▼
僧侶(ここの魔物はすごく強いし、なかなか逃げ切れないし)
僧侶(歩くたびに体力が回復するアイテムでもあったら良かったんだけど)
僧侶(でも、無いものねだりしてもしょうがないよね)
僧侶「ハァ……ハァ……」
僧侶「……!」
魔物のむれが あらわれた!
僧侶(5……6体も……完全に行く手を塞がれちゃってる。逃げ道も……)
僧侶(でも、僕は前に進むんだ!)
魔物Aは ヒャダルコを となえた! ▼
僧侶「ぐっ!」
魔物Bの こうげき! ▼
魔物Cの こうげき! ▼
魔物Dは もえさかる火炎を はいた! ▼
僧侶「わあああっ!」
僧侶(お、落ち着くんだ。ダメージはまだ耐えられる)
僧侶(素早く振り回せば、『ひのきのぼう』も簡単には焼かれない)
僧侶(まずは一体ずつ、確実に減らしていくんだ)
僧侶の こうげき!
魔物Aに ダメージを あたえた!
僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼
魔物Eは ちからを ためている!
魔物Fは イオラを となえた! ▼
僧侶「ぐっ……」
僧侶「ま、まだまだ……!」
――
僧侶の こうげき!
魔物Aに ダメージを あたえた!
魔物Aを たおした!
僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが 回復した! ▼
僧侶(やっと一体……)
魔物Cの こうげき!
魔物Fは メラゾーマを となえた!
魔物Eの こうげき!
僧侶「うぐぐっ……」
魔物Dは こごえる吹雪を はいた!
魔物Bの こうげき! ▼
僧侶「ま」
僧侶「まだまだっ!」
僧侶の こうげき!
魔物Bに ダメージを あたえた!
僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼ ――
――
僧侶「ハァ……ハァ……」
僧侶の こうげき!
魔物Cに ダメージを あたえた!
魔物Cを たおした! ▼
僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが 回復した! ▼
僧侶(これで残り半分……)
魔物Eの こうげき!
僧侶は ひらりと みをかわした!
魔物Fは ラリホーを となえた!
僧侶には きかなかった!
魔物Dは もえさかる火炎を はいた!
僧侶は ダメージを受けた! ▼
僧侶(いける。もう攻撃パターンも分かってきたぞ)
僧侶(いける。行けるよ)
僧侶(勇者、僕もいま、魔王の城へ……)
僧侶のこうげき! ――
――
僧侶の こうげき!
魔物Fに ダメージを あたえた!
魔物Fを たおした! ▼
僧侶は 魔物のむれを たおした!
僧侶は 経験値を 獲得した! ▼
僧侶「ハァ……ハァ……げほっ、げほっ……ハァ……」
僧侶(何とか……乗り切ったぞ)
僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが 回復した! ▼
僧侶「……」
僧侶(休んじゃいられない)
僧侶(急ごう、勇者のもとに……)
僧侶「!」
僧侶「あ。あれは――」
僧侶「虹だ!」
僧侶(それも、魔王城にかかってる!)
僧侶(そうか、あれが)
僧侶(あれがきっと、村長さんの言ってた『魔の城へ続く道』なんだ!)
僧侶「すごい……!」
僧侶(あれなら魔王城の中まであっという間だ)
僧侶(これが北の城の国宝、オーブの力なんだ……きれいだなぁ……)
僧侶(! い、いけない、見とれてる場合じゃない!)
僧侶「急がなくちゃ!」
僧侶は かけだした!
僧侶「……」
僧侶(魔物が見当たらないな……)
僧侶(なんだか、城に近付くにつれて魔物の数が減っていってるみたいだし……)
僧侶(……ちょっと気になるけど、今は先を急ごう――)
――
【魔大陸>山麓】
僧侶(あれから魔物が出てこなかったおかげで、思ったよりスイスイ進めて)
僧侶(……ついに山のふもとまで着いたけど……)
ヒュオオオオォォ……
僧侶(思ったより険しい。ずっと急斜面だ。こんなの登れるのかな)
僧侶(……いや。登れるかどうかじゃない)
僧侶(登るんだ。この山を越えた先の魔王の城に、勇者たちはいるんだから)
僧侶(魔物もいないみたいだし、『ひのきのぼう』で一歩ずつ斜面を突いていけば……)
僧侶「……ん?」
僧侶「あれは?」
僧侶「……洞窟? 洞窟だ!」
僧侶(もしかしたら、山を登らずに向こう側に越えられるかも)
僧侶(でも、行き止まりだったら……ううん、そのときはそのときだ。行こう!)
【魔大陸>洞窟】
――……
僧侶(……静かな場所だ)
僧侶(本当に魔王の本拠地に入ってるのかな)
僧侶(魔物の気配がまるでない)
僧侶(どうなっているんだろ)
――――……
僧侶(歩いても歩いても、何もない普通の洞窟だ)
僧侶(……でも、なんだか先に進めば進むほど、胸騒ぎを感じる)
僧侶(やっぱりこの先には、何かあるんだ)
――――――……
僧侶(……どのくらい経ったかな)
僧侶(どこまで続くんだろう。結構長いなぁ)
僧侶(山地をひとつ越えるぐらいだから、相応にかかるんだろうけど)
僧侶(……何にもないや。いったい何のために作られた洞窟なんだろ……――)
――
僧侶「――ん? あれは……」
僧侶(明かりだ! 奥から光が零れてる)
僧侶(やっと出口かな? 急がなきゃ……)
――
ズズズズズズズ…
僧侶「こ、これは……」
僧侶(この青白い光を放つ、地面に張り付いた不思議な渦巻きは……確か……)
僧侶「『旅のとびら』だ!」
僧侶(別の場所にある『旅のとびら』に繋がっている、ワープゾーンだ!)
僧侶(良かった、これでやっと洞窟から出られそうだ)
僧侶(……でも、どこに繋がっているんだろう。飛び込んでみないと分からないけど……)
僧侶(迷ってるヒマがもったいない。正解にしろハズレにしろ、もうここまできたら!)
僧侶「いくぞ!」
僧侶は 旅のとびらに とびこんだ!! ▼ ――――
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