僧侶「ひのきのぼう……?」 23/31

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商人「うびゃあ!」

勇者「固まってると危ない!」

賢者「二手に分かれましょう! 相手が動けないのならば、陣形は自由に組めます!」

商人「じゃあ今の位置的にワシと賢者殿ですかな!」

戦士「俺は勇者につく!」

勇者「お願い!」

賢者「また来ます!」

魔王のころもから はげしいほのおが ふきだした!

魔王のころもから こごえるふぶきが ふきだした! ▼

商人「逃げろォ!」

賢者「くっ。だが魔王も、こちらが2グループに分かれたことで的が絞りきれていない」

勇者「いいぞ、少しずつ攻略の糸口がつかめてきた……!」

戦士「ブレスが止んだ! 行くぞ!」

戦士の こうげき!

魔王のころもから ケモノの腕がつきだした! ▼

戦士「ぐっ! この豪腕はクマの魔物の……!」

勇者の こうげき!

魔王のころもは てつのかたまりに なった!

魔王は ダメージを うけない! ▼

勇者「か、硬い!? 部分的なメタル化まで!?」

賢者「お二人とも離れて!」

賢者は メラゾーマを となえた!

魔王『……!!』 ドムッ

魔王は ダメージを うけた! ▼

賢者(よし、命中した!)

賢者(この魔王が炎を扱う攻撃を取るとき、常にマントが開いていた)

賢者(つまりあの衣は、炎で燃やせる可能性がある! さぁ、正体を見せてみろ……!)

戦士「マントが燃えていく!」

勇者「魔王の正体が……!」

魔王『お……オオ……』

グジュグジュ グジュグジュ

勇者「!」

戦士「なっ……!」

魔王のころもが もえつきた!

魔王のすがおが さらされた!

魔王の正体が あらわれた! ▼

賢者「あ、あれは……人型を為していない……!」

商人「スライム状の太い触手が、幾重にも縦に連なって脈打ってて気持ち悪いですぞ!!」

商人「……そして素顔が……顔がない!? 目も、鼻も、口もない!」

賢者「こ、これは……花? 魔王の頭部が、どす黒い花になっている!」

魔王『オオオ 人間 共め オオオオ』

戦士「これが魔王の正体!?」

勇者「な、なんて禍々しい花なんだ……」

魔王『オ オオ オオ 』

ピシ ベキベキベキ

商人「!? ゆ、床が!」

賢者「根から魔力を送られています、阻止を!」

戦士「おう!」

勇者「そうだ、胴体を切り離さないと!」

戦士のこうげき!

勇者のこうげき!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった! ▼

勇者「えっ!?」

魔物は はげしいほのおを はきだした!

戦士「うおあっ!」

勇者「ドラゴンだ! あのうねっている身体から、ドラゴンの頭が!」

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから ―― ▼

戦士「な……どんどん増えていくぞ! 膨れ上がっていく!」

商人「……物質系……悪魔系……ゾンビ系! キリがありませんぞ!」

賢者「こ、これらはおそらく」

賢者「魔王が今まで喰らってきた魔物たち!」

賢者「魔王城内のすべての魔王軍を、この魔王は吸収し続けてきたのです!」

賢者「そして喰らったものを自在に浮き上がらせ、その特技・特徴を使いこなす……」

賢者「魔物のるつぼから成る巨大な怪奇植物。それが魔王の正体!」

戦士「馬鹿な……それでは魔王軍すべてを、一度に相手にしなければならないというのか!?」

勇者「こんなものを、世にのさばらせる訳にはいかない!」

魔王『余ハ『『余は』ハ魔王』 オオオ』 魔王』デアる』ルで』デアルオオオオ』

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった! ――

商人「い、勢いが止まりませんぞ!」

賢者「やらせてはいけない!」

賢者は イオナズンを となえた!

魔物のむれに ダメージを あたえた! ▼

勇者「穴が空いた! 今のうちに――」

魔王の キズが 回復した! ▼

魔王の キズが 回復した! ▼

魔王の キズが 回復した! ▼

戦士「何だと!?」

商人「あ、あっという間に再生しましたぞ!」

勇者「こ……こんなのどうやって倒せば……」

魔王『オオオオオオ オオオオオオ オ オ オ オ』

商人「もう屋上の半分は埋まってしまいましたぞ!」

勇者「斬り込もうにも、どこから突破口を開けばいいのか……!」

戦士「も、もはや万事休すか……!?」

賢者「……皆さん」

賢者「策の整理がつきました。集まってください」

勇者「えっ?」

賢者「まず私が――」

魔王『オオオ オオオ オオオオオ オオオ オ』

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった! ▼

戦士「――そ、そんなことができるのか?」

商人「し、しかもここであのアイテムを使うのですか!?」

賢者「はい。確かに博打性は高いですが、試行錯誤しないと何も始まりません」

商人「し、しかしアレを使うなんて不安定極まりないですぞ!?」

勇者「いや、他に策は思いつけない、賢者さんを信じよう!」

戦士「時間もない、急ぐぞ!」

賢者「では配置に!」

商人「だ、大丈夫ですかな!? ええい、もうヤケクソだ!」

魔王『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった!

魔王のからだから 魔物がうかびあがった! ▼

勇者(……あの魔王を倒せるかどうか、この作戦にかかっている)

勇者(この世の人々の……平和と幸せのために……)

勇者(今こそ勇気を!)

勇者は 伝説の剣を 高くかかげた! ▼ ――

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【北の城】

衛兵「国王様、見張り台よりご報告します! 虹のかかった魔王城の天辺から、怪しげな影が!」

衛兵「何やら地鳴りよう音もかすかに響いており、勇者様はただいま交戦中と思われます!」

衛兵「また城下の民も一斉に高台に押しかけ、事の趨勢を見守っている模様……」

国王「うむ……。余はつい今しがた、勇者の声が聞こえたような気がした」

国王「おそらく魔王との戦いで、正念場を迎えているのであろう」

大臣「ううむ……もし勇者たちが敗れるようなことがあれば……」

国王「心配には及ばぬ。なぜなら余は、この目で確かめた勇者を信じているからだ」

国王「我らにできることは、勇者の勝利を祈り、更になお信じること……」

衛兵「勇者様……」

兵士A「勇者様!」

兵士B「勇者様……!」

国王(勇者よ、無事に帰ってくるのだ――)

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【東の村>ほこら】

村長「……! 勇者様!」

村長(今まさに、魔王と戦っておられるのですな……!)

村長(『虹の橋』の先端には、もはや魔力の手ごたえを感じませぬ)

村長(恐らく魔王城から発せられている別の魔力により、橋の先端がかき消されているのでしょう)

村長(魔力の源が断ち切られれば……魔王を倒せば、恐らく妨害魔力は消え)

村長(リレミトやルーラでの脱出も可能になるでしょう)

村長(しかしこの老いぼれ、万が一にそなえ、命続く限りオーブに魔力を送り込み)

村長(『虹の橋』による帰路は残しておきますぞ!)

村長(勇者様、必ず無事に帰ってきてくだされ――!)

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【南の港町>露店通り】

*「! いま、誰かの声が聞こえたような……」

*「お前もか? 俺もなんか……」

*「いま何か地鳴りが……あっ! おい見ろ、魔王の城から影が伸びてるぞ!」

*「いま勇者様が戦ってるんだ! そうに違いねえ!」

*「こりゃ商売どころじゃねえや! 俺らの声を天に届けてもらおうぜ!」

*「うおおおおお勇者様、頑張れえぇッ!」

*「勇者様、私はあなたを宿屋まで案内したものです! 必ず無事に帰ってきてください!」

*「俺は勇者に貴重なアイテムを格安で譲ったんだ! 負けたら承知しねーぞ!!」

*「俺の仲間は魔王軍にやられた! もし勇者が負けちまっても、俺らが続いてやる!」

*「もしここに戻ってこれたら、この在庫の『せいすい』全部くれてやらあ!」

*「負けんじゃねえぞ! 絶対魔王の奴をぶっ倒せ!!」

*「勇者様頑張れ! 頑張れ――!」

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【西の町】

幼児「パパーッ!」

幼児「いま、ママのこえがきこえた!」

師範「ああ……!」

師範(我が妻が、今まさに決戦の地で戦っているのだ)

師範(勇者の手のうちにありながら、世界を守らんとするために戦っているのだ!)

幼児「ねえパパ、もしかしてママはもどってくるの?」

師範「……帰ってくる。必ず、帰ってくる」

師範「帰ってきて、また三人で幸せに暮らす日々が、始まるのだ」

幼児「ほんと!?」

師範「だからお前も……ママの無事を、勇者の勝利を信じるのだ」

幼児「ゆうしゃさま? うん、分かった! しんじる!」

師範(勇者よ! 我が最愛の妻よ! 必ず無事に帰ってくるのだぞ……!!)

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―― ―― ―― ―― ――

【魔王城・1F】

僧侶「あれ?」

僧侶「ここってお城の中?」

僧侶「ってことは魔王城の中だ!」

僧侶「やっぱりあの旅のとびらは、飛び込んで正解だったんだ!」

僧侶「おかげで、山麓から一気に魔王城にワープでき――」

僧侶「!」

僧侶「勇者!?」

僧侶(勇者の声が聞こえた気がした!)

僧侶(そうか、いま魔王と戦っているんだね)

僧侶(さっきから上の方から振動が伝わる。この上の階層で決戦が始まってるんだ!)

僧侶(今から向かって間に合うかな? いや、間に合わなくてもいい、行かなきゃ!)

僧侶(勇者! 戦士さん、商人さん、賢者さん! みんな頑張って――!)

―― ―― ―― ―― ――

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【魔王城・屋上】

戦士「! ……おお……」

商人「人々の声が聞こえてくる気がしますぞ!」

賢者「四方各位から声援……激励……無事の祈願が……!」

勇者「みんなの……みんなの声が、この剣に伝わってくる」

勇者「みんな、ありがとう!」

勇者「よしっ、もう何も怖くないぞっ! やろう!」

賢者「はい! では参ります!」

魔王『オオオオオオオオオオオオオオオオオオ』

賢者(……術士というものは魔力あってこそ。魔力が枯れれば存在価値は皆無に等しい)

賢者(ゆえに自身の意義を保つため、私の人生で数えるほどしか使わなかった呪文……)

賢者(だが今は、共に戦う仲間がいる! 為さなければならない目的がある!)

賢者のからだに すべての魔力が あつまっていく! ▼

賢者「邪悪なる狂気の温床よ! 我が渾身の魔力を……くらえっ!!」

賢者は マダンテを となえた!

ぼうそうした まりょくが ばくはつを おこす! ▼

魔王『!?』!?』?『?!』』 カッ

ドッ ドドドドドドドド ドドドドドドドッ

ドドドド ドドドドドドドドドドッ

ドドドドドドドドドドド ドドドドドドドドドッ

魔王に 大ダメージを あたえた! ▼

勇者「うわあっ! す、すごい……!」

戦士「いいぞ! 魔物の大半が消し飛んだ!」

賢者「ハァッ……ハァ……今です、商人殿!」

商人「ええい、ままよ!」

商人は 魔王に むかって 突撃した!

商人は はんにゃのめんを とりだした! ▼

商人「ワシは今だけ商人をやめるぞーっ!!」

勇者「ボクたちも行こう!」

戦士「おおう!」

魔王の キズが 回復した! ▼

魔王の キズが 回復した! ▼

魔王の キズが 回復した! ▼

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