僧侶「ひのきのぼう……?」 28/31

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僧侶「ハァ……ハァ……やああっ!」

竜王(いくら魔力が回復しても、いくら回復呪文を重ねがけても)

竜王(心身に溜まる疲労は限界のはずだ)

僧侶の こうげき!

竜王に 5のダメージを あたえた! ▼

竜王(それがなぜ幾度も立ち上がり、向かってくる。勝ち目がないにも関わらず――)

僧侶「やああっ!」

竜王に 3のダメージを あたえた! ▼

竜王(一体何が)

竜王(この小僧をここまで駆り立てるのだ)

竜王(この小僧を突き動かしている『欲』は何なのだ)

竜王(知りたい。知らねばならぬ)

僧侶(……動きが鈍くなった?)

僧侶(! 赤い眼が光ってる!)

僧侶(僕の……情報を探ろうとしている……?)

竜王(! ――この小僧はっ!)

竜王(名誉も金も、愛すら求めてはいない)

竜王(……信じられぬ……この小僧は俗世に塗れながら)

竜王(『欲』が……ないに等しい)

僧侶は スカラを となえた!

僧侶の 守備力が あがった! ▼

竜王(先刻この小僧は、自身は『満ち足りている』と口走ったが)

竜王(決して虚言ではなかった。この小僧は、その恵まれぬ境遇の中で……)

竜王(あらゆることに満足し、とりとめのない些事に幸福を覚えてきたのだ)

僧侶は ピオリムを となえた!

僧侶の すばやさが あがった! ▼

竜王(そして……愚直に、己の信ずる道を歩んできた)

竜王(後先も考えず、ただ愚直を貫き……)

竜王(こうして今、我の前に立っている)

僧侶は フバーハを となえた!

僧侶を やさしい ひかりのころもが つつみこんだ! ▼

竜王(――この小僧は、我にあらがうに差し当たって)

竜王(世の平和秩序のためなどといった、特別な大義を負っているわけではない)

竜王(盲目的な義務感、傀儡的な使命感を抱いているわけでもない)

竜王(この絶望的な状況から、自暴自棄になっているわけでもない)

僧侶「……よし」

竜王(こやつは)

竜王(自身の意志で、ただこの場にて『良かれ』と感ずる行為を推し進めているに過ぎん)

竜王(先々の帰結を主体としておらぬのだ。重きを置くは、むしろ眼前の指針)

竜王(奴の胸中は当面、『勇者に真実を伝える』のみに在り、他意はまるで何もない)

竜王(『良かれ』と思い、目標を逐一見定め、それに向け愚直に走っているに過ぎん。愚直に……)

竜王『ならば、その気骨をへし折るまでよ』

僧侶「!」

竜王『聞くがいい、小僧よ。貴様の為そうとしていることは決して叶わぬのだ。なぜなら――』

竜王『この【竜王の間】にも、この扉の先にも、出口などないからだ』

僧侶「……えっ?」

竜王『この扉の先は【魔界樹の間】』

竜王『いくら探り歩いても、魔界樹の「根」の他には何もない』

竜王『そしてこの空間は、【竜王の間】と【魔界樹の間】のみで構成されておる』

竜王『階段も抜け道も皆無にして、当然呪文での脱出も不可能』

竜王『「旅のとびら」を閉ざしてしまえば、生身の人間が抜け出す手段はない』

竜王『また、我がこの姿で戦うことを基準としたつくりのために、外壁は超硬度を誇る』

竜王『此処からの脱出も、外部からも侵入も不可能。貴様は完全に孤立しているのだ』

僧侶「……」

竜王『さぁ、己の行動の無意味さを悟ったであろう』

竜王『貴様は人間にしては度を過ぎるほどに、よく戦った』

竜王『幾多の障害にも屈せず、自らの理念を貫いたのだ。ここまで、よくも戦った』

竜王『もう十分であろう。安心して眠りにつくがよい――』

僧侶「…………」

僧侶「竜王」

僧侶「ありがとう」

竜王『!?』

僧侶「お前は僕のことを分かってくれた、最後の理解者だよ」

僧侶「こんな僕を分かってくれて、ありがとう。これだけを、死ぬ前に言っておきたかった」

竜王『ふっ……心の整理がついたようだな。良かろう』

竜王『その潔さに免じ、最期は一思いに楽にしてやろう……』

僧侶「違うよ。死ぬ前にっていうのは、『僕が』だけじゃない。お前もだよ」

竜王『……何?』

僧侶「ここから出られないんなら、目的を変える」

僧侶「お前と、魔界樹を倒す」

竜王『!?』

僧侶「倒すのは無理だったとしても、手負いにする」

僧侶「少しでも、後に戦う勇者たちが楽になるように」

竜王『な、何だと……!?』

竜王『……例え手負いにしたとて、その傷は五年も経てば完治するのだぞ』

竜王『やはりお前のやろうとしていることは、無意味徒労――』

僧侶「お前はそうかもしれないけど」

僧侶「魔界樹は勝手が違うかもしれない」

竜王『!』

僧侶「最初からもしかしたら、って思ってたんだ」

僧侶「僕を頑なに、扉の先――【魔界樹の間】に通させないのは、何か理由があるかもって」

僧侶「例えば、今なら小さなダメージでも、後々の再生に影響してしまうから、とか」

竜王『……』

僧侶「ね。そんな可能性も考えたら、戦うことに意味はある」

僧侶「僕は確かにもうボロボロで、いま立っているのもきついけど」

僧侶「眠りにつくのは、本当に指一本動かせなくなったときだ」

僧侶「僕は最期の最後まで、自分ができることを貫くよ」

竜王『……そうか。ならばもうよい』

竜王『この地の底でどこまでも幻想を追い求め、愚かな終末を迎えるが良い!』

――

竜王は はげしいほのおを はきだした!

僧侶は ダメージを 受けた! ▼

僧侶の こうげき!

竜王に 3のダメージを あたえた!

僧侶は ベホマを となえた!

僧侶の キズが かいふくした!▼

竜王は はげしく尻尾を ふりまわした!

僧侶は ひらりと みをかわした! ▼

僧侶の こうげき!

竜王に 3のダメージを あたえた!

僧侶の こうげき!

竜王に 5のダメージを あたえた!

僧侶の スカラの 効果がきれた! ▼

竜王は 僧侶を 大きな足で ふみつぶした!

僧侶は ダメージを 受けた! ▼

僧侶の こうげき!

竜王に 4のダメージを あたえた!

僧侶は スカラを となえた!

僧侶の 守備力が あがった! ▼ ――

――

竜王(なぜだ)

竜王(なぜ折れぬ)

僧侶の こうげき! ▼

竜王(この何の能力もない、ヒノキの棒が)

竜王(幾度も我の外皮を突いてるにも関わらず、へし折れぬ)

竜王(幾度も火炎を浴びせているにも関わらず、燃え尽きぬ)

竜王(折れぬ。ただの棒きれが、折れぬ)

竜王(たかがヒノキの棒の分際で)

竜王(――我に向かってくる!)

竜王(折れぬ。折れぬ!!)

僧侶の こうげき! ▼

僧侶の こうげき! ▼ ――

――

僧侶「やああっ!」

僧侶の こうげき!

竜王(――この泥沼の戦いの中で――)

竜王は 3のダメージを うけた! ▼

竜王(――小虫が大樹の葉を食むがごとく――)

僧侶の こうげき! ▼

竜王(じわじわと――)

竜王(しかし確実に――)

竜王は ダメージを うけた! ▼

竜王(我の生命が削られつつある――!!)

――

竜王『グオオオオッ!』 ズシ…ンン…

竜王は 地に前足を つけた! ▼

僧侶「ハァ……ハァ……」

僧侶(やっと……膝をつかせたぞ……これで頭に届く……!)

竜王『貴……様!』

竜王は はげしいほのおを はいた! ▼

僧侶「うああああっ!」

僧侶に 直撃!

僧侶は 大ダメージを うけた! ▼

僧侶「げほっ、かはっかはっ」

僧侶は ベホマを となえた!

僧侶の キズが かいふくした! ▼

僧侶(フバーハもピオリムも効果がきれてた……きつい一撃だったな……)

僧侶(あ……今ので『かわのぼうし』が、完全に燃え尽きちゃった……)

竜王『グルルルル……』

竜王(……あの額の印は……王家の印……)

竜王(『追放者の証』……)

竜王(同族にそこまでの仕打ちを受けながら、なぜ人のために戦える)

竜王(この世の誰一人、お前の奮闘を知りはしないのだぞ)

竜王(天界の目はもちろん、勇者が『伝説の剣』で為していたように)

竜王(他人へ声を届けることも、支援を集めることもできないのだぞ)

竜王(ともに戦う仲間もおらず、まともな武器やアイテムさえ持たず)

竜王(命を捨てるも同然の、無謀な戦いを続けられるのは何故だ。何故だ――)

僧侶「うわあああっ!」

竜王『!! く、来るな』

竜王『物狂いの分際が、我に纏うなアアァァ!!』

竜王は はげしいほのおを はきだした!

僧侶は フバーハを となえた! ▼ ――

――――

僧侶(も。もう)

僧侶(魔力がなくなってきた)

僧侶(今度こそ、終わりが近付いてきた)

僧侶(結局、魔界樹までたどりつけなかったけど)

僧侶(悔いはない。僕にしては、よくやった方)

僧侶(そうだよね、勇者――)

僧侶「勇者」

僧侶(そっか。僕は……勇者に幸せになって欲しいから――)

僧侶は バギマを となえた! ▼

竜王『ぬ!?』

竜王(攻撃呪文? この戦いで初めて見る。だが――!)

竜王には きかなかった! ▼

竜王(馬鹿め。この姿の我には、一切の呪文は通じぬ――)

竜王『!?』

竜王(い、いない!? 奴はどこに消えたのだ! !?)

僧侶「うわあああぁぁっ!!」

竜王『上か!?』

竜王(こやつ、バギマの気流に乗って飛んだというのか!?)

竜王(自殺行為な。自らの呪文で傷だらけではないか!)

竜王(しかも飛びすぎたな。上から降下したところで、まだ距離がある!)

竜王(何もない空中では、軌道を変えられん!)

竜王は 口をおおきく ひらいた! ▼

竜王(至近距離で消し炭にしてやる!)

竜王(これで終いだ!!)

僧侶「――!!」 ヒュッ

僧侶は 空きビンを なげつけた! ▼

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