僧侶「ハァ……ハァ……やああっ!」
竜王(いくら魔力が回復しても、いくら回復呪文を重ねがけても)
竜王(心身に溜まる疲労は限界のはずだ)
僧侶の こうげき!
竜王に 5のダメージを あたえた! ▼
竜王(それがなぜ幾度も立ち上がり、向かってくる。勝ち目がないにも関わらず――)
僧侶「やああっ!」
竜王に 3のダメージを あたえた! ▼
竜王(一体何が)
竜王(この小僧をここまで駆り立てるのだ)
竜王(この小僧を突き動かしている『欲』は何なのだ)
竜王(知りたい。知らねばならぬ)
僧侶(……動きが鈍くなった?)
僧侶(! 赤い眼が光ってる!)
僧侶(僕の……情報を探ろうとしている……?)
竜王(! ――この小僧はっ!)
竜王(名誉も金も、愛すら求めてはいない)
竜王(……信じられぬ……この小僧は俗世に塗れながら)
竜王(『欲』が……ないに等しい)
僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼
竜王(先刻この小僧は、自身は『満ち足りている』と口走ったが)
竜王(決して虚言ではなかった。この小僧は、その恵まれぬ境遇の中で……)
竜王(あらゆることに満足し、とりとめのない些事に幸福を覚えてきたのだ)
僧侶は ピオリムを となえた!
僧侶の すばやさが あがった! ▼
竜王(そして……愚直に、己の信ずる道を歩んできた)
竜王(後先も考えず、ただ愚直を貫き……)
竜王(こうして今、我の前に立っている)
僧侶は フバーハを となえた!
僧侶を やさしい ひかりのころもが つつみこんだ! ▼
竜王(――この小僧は、我にあらがうに差し当たって)
竜王(世の平和秩序のためなどといった、特別な大義を負っているわけではない)
竜王(盲目的な義務感、傀儡的な使命感を抱いているわけでもない)
竜王(この絶望的な状況から、自暴自棄になっているわけでもない)
僧侶「……よし」
竜王(こやつは)
竜王(自身の意志で、ただこの場にて『良かれ』と感ずる行為を推し進めているに過ぎん)
竜王(先々の帰結を主体としておらぬのだ。重きを置くは、むしろ眼前の指針)
竜王(奴の胸中は当面、『勇者に真実を伝える』のみに在り、他意はまるで何もない)
竜王(『良かれ』と思い、目標を逐一見定め、それに向け愚直に走っているに過ぎん。愚直に……)
竜王『ならば、その気骨をへし折るまでよ』
僧侶「!」
竜王『聞くがいい、小僧よ。貴様の為そうとしていることは決して叶わぬのだ。なぜなら――』
竜王『この【竜王の間】にも、この扉の先にも、出口などないからだ』
僧侶「……えっ?」
竜王『この扉の先は【魔界樹の間】』
竜王『いくら探り歩いても、魔界樹の「根」の他には何もない』
竜王『そしてこの空間は、【竜王の間】と【魔界樹の間】のみで構成されておる』
竜王『階段も抜け道も皆無にして、当然呪文での脱出も不可能』
竜王『「旅のとびら」を閉ざしてしまえば、生身の人間が抜け出す手段はない』
竜王『また、我がこの姿で戦うことを基準としたつくりのために、外壁は超硬度を誇る』
竜王『此処からの脱出も、外部からも侵入も不可能。貴様は完全に孤立しているのだ』
僧侶「……」
竜王『さぁ、己の行動の無意味さを悟ったであろう』
竜王『貴様は人間にしては度を過ぎるほどに、よく戦った』
竜王『幾多の障害にも屈せず、自らの理念を貫いたのだ。ここまで、よくも戦った』
竜王『もう十分であろう。安心して眠りにつくがよい――』
僧侶「…………」
僧侶「竜王」
僧侶「ありがとう」
竜王『!?』
僧侶「お前は僕のことを分かってくれた、最後の理解者だよ」
僧侶「こんな僕を分かってくれて、ありがとう。これだけを、死ぬ前に言っておきたかった」
竜王『ふっ……心の整理がついたようだな。良かろう』
竜王『その潔さに免じ、最期は一思いに楽にしてやろう……』
僧侶「違うよ。死ぬ前にっていうのは、『僕が』だけじゃない。お前もだよ」
竜王『……何?』
僧侶「ここから出られないんなら、目的を変える」
僧侶「お前と、魔界樹を倒す」
竜王『!?』
僧侶「倒すのは無理だったとしても、手負いにする」
僧侶「少しでも、後に戦う勇者たちが楽になるように」
竜王『な、何だと……!?』
竜王『……例え手負いにしたとて、その傷は五年も経てば完治するのだぞ』
竜王『やはりお前のやろうとしていることは、無意味徒労――』
僧侶「お前はそうかもしれないけど」
僧侶「魔界樹は勝手が違うかもしれない」
竜王『!』
僧侶「最初からもしかしたら、って思ってたんだ」
僧侶「僕を頑なに、扉の先――【魔界樹の間】に通させないのは、何か理由があるかもって」
僧侶「例えば、今なら小さなダメージでも、後々の再生に影響してしまうから、とか」
竜王『……』
僧侶「ね。そんな可能性も考えたら、戦うことに意味はある」
僧侶「僕は確かにもうボロボロで、いま立っているのもきついけど」
僧侶「眠りにつくのは、本当に指一本動かせなくなったときだ」
僧侶「僕は最期の最後まで、自分ができることを貫くよ」
竜王『……そうか。ならばもうよい』
竜王『この地の底でどこまでも幻想を追い求め、愚かな終末を迎えるが良い!』
――
竜王は はげしいほのおを はきだした!
僧侶は ダメージを 受けた! ▼
僧侶の こうげき!
竜王に 3のダメージを あたえた!
僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが かいふくした!▼
竜王は はげしく尻尾を ふりまわした!
僧侶は ひらりと みをかわした! ▼
僧侶の こうげき!
竜王に 3のダメージを あたえた!
僧侶の こうげき!
竜王に 5のダメージを あたえた!
僧侶の スカラの 効果がきれた! ▼
竜王は 僧侶を 大きな足で ふみつぶした!
僧侶は ダメージを 受けた! ▼
僧侶の こうげき!
竜王に 4のダメージを あたえた!
僧侶は スカラを となえた!
僧侶の 守備力が あがった! ▼ ――
――
竜王(なぜだ)
竜王(なぜ折れぬ)
僧侶の こうげき! ▼
竜王(この何の能力もない、ヒノキの棒が)
竜王(幾度も我の外皮を突いてるにも関わらず、へし折れぬ)
竜王(幾度も火炎を浴びせているにも関わらず、燃え尽きぬ)
竜王(折れぬ。ただの棒きれが、折れぬ)
竜王(たかがヒノキの棒の分際で)
竜王(――我に向かってくる!)
竜王(折れぬ。折れぬ!!)
僧侶の こうげき! ▼
僧侶の こうげき! ▼ ――
――
僧侶「やああっ!」
僧侶の こうげき!
竜王(――この泥沼の戦いの中で――)
竜王は 3のダメージを うけた! ▼
竜王(――小虫が大樹の葉を食むがごとく――)
僧侶の こうげき! ▼
竜王(じわじわと――)
竜王(しかし確実に――)
竜王は ダメージを うけた! ▼
竜王(我の生命が削られつつある――!!)
――
竜王『グオオオオッ!』 ズシ…ンン…
竜王は 地に前足を つけた! ▼
僧侶「ハァ……ハァ……」
僧侶(やっと……膝をつかせたぞ……これで頭に届く……!)
竜王『貴……様!』
竜王は はげしいほのおを はいた! ▼
僧侶「うああああっ!」
僧侶に 直撃!
僧侶は 大ダメージを うけた! ▼
僧侶「げほっ、かはっかはっ」
僧侶は ベホマを となえた!
僧侶の キズが かいふくした! ▼
僧侶(フバーハもピオリムも効果がきれてた……きつい一撃だったな……)
僧侶(あ……今ので『かわのぼうし』が、完全に燃え尽きちゃった……)
竜王『グルルルル……』
竜王(……あの額の印は……王家の印……)
竜王(『追放者の証』……)
竜王(同族にそこまでの仕打ちを受けながら、なぜ人のために戦える)
竜王(この世の誰一人、お前の奮闘を知りはしないのだぞ)
竜王(天界の目はもちろん、勇者が『伝説の剣』で為していたように)
竜王(他人へ声を届けることも、支援を集めることもできないのだぞ)
竜王(ともに戦う仲間もおらず、まともな武器やアイテムさえ持たず)
竜王(命を捨てるも同然の、無謀な戦いを続けられるのは何故だ。何故だ――)
僧侶「うわあああっ!」
竜王『!! く、来るな』
竜王『物狂いの分際が、我に纏うなアアァァ!!』
竜王は はげしいほのおを はきだした!
僧侶は フバーハを となえた! ▼ ――
――――
僧侶(も。もう)
僧侶(魔力がなくなってきた)
僧侶(今度こそ、終わりが近付いてきた)
僧侶(結局、魔界樹までたどりつけなかったけど)
僧侶(悔いはない。僕にしては、よくやった方)
僧侶(そうだよね、勇者――)
僧侶「勇者」
僧侶(そっか。僕は……勇者に幸せになって欲しいから――)
僧侶は バギマを となえた! ▼
竜王『ぬ!?』
竜王(攻撃呪文? この戦いで初めて見る。だが――!)
竜王には きかなかった! ▼
竜王(馬鹿め。この姿の我には、一切の呪文は通じぬ――)
竜王『!?』
竜王(い、いない!? 奴はどこに消えたのだ! !?)
僧侶「うわあああぁぁっ!!」
竜王『上か!?』
竜王(こやつ、バギマの気流に乗って飛んだというのか!?)
竜王(自殺行為な。自らの呪文で傷だらけではないか!)
竜王(しかも飛びすぎたな。上から降下したところで、まだ距離がある!)
竜王(何もない空中では、軌道を変えられん!)
竜王は 口をおおきく ひらいた! ▼
竜王(至近距離で消し炭にしてやる!)
竜王(これで終いだ!!)
僧侶「――!!」 ヒュッ
僧侶は 空きビンを なげつけた! ▼